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LADY GUN
【推理 推理小説】

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-5

 道は大渋滞であった。至る所に亀裂が入り沿道の電柱は傾き公衆電話ボックスまでも倒れかかっている。ガラスが割れ塀も崩れ落ちている家屋、信号機も役目を果たしていない。まるで映画を見ているような惨状に愕然とする。
 渋滞にはまる石山の運転するパトカー。若菜の気持ちを考えるとなかなか声がかけずらかった。
 「上原、よく復活したな。」
石山がようやく口を開く。
 「ご心配とご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
頭を下げる若菜。
 「俺に出来る事はなんでも協力するから言ってくれよな?」
 「あ、じゃあ私に武術を教えて下さい。剣道と柔道を。」
 「あ、ああ。いいぞ?」
こんな前向きな答えがすぐ帰って来るとは思わなかった石山は驚いた。
 「石山さん、角田さんは…?」
あの事件の後の俊介が気になった。
 「角田は…辞めたよ。警察を…」
 「辞めた…?」
 「ああ。退院してすぐに辞表を出して来たらしい。引き止めはしたが無駄だったようだよ。俺も何て声をかけていいか分からず連絡取れてないんだ。」
 「そうですか…。」
俊介が警察を辞めた事を責める気にはなれなかった。あのような惨い事があったのだ。その目でその惨劇を目の前にした若菜には俊介の気持ちが良く分かった。
 「くそ、どうやら橋が通行止めになっているらしい。遠回りしたいが車が動かない…。」
現場に急行したいが仕方ない。小洗町に入れたのは夜の20時を過ぎた頃だった。海水は引いたとは言え泥水溜まる道路。たくさんの破片を踏む音と振動がしきりに伝わってくる。
 「あ…アウトレットがグチャグチャ…。」
休日にたまにくるアウトレットモールは海岸付近にある。完全に津波被害を受けていた。
 「あれ?誰かいる?」
暗闇のアウトレットに人が動くのがぼんやり見えた。
 「方付けしてるのか…。まだ津波が来るかもしれないしな。危険だ。注意してくるか。」
石山はハンドルを切った。アウトレットを正面にライトが当たる。するとライトを確認した人影が何故か慌てて逃げる。視界からあっと言う間にいなくなってしまった。
 「何で逃げるんだ?」
不審に思った石山がパトカーを降りアウトレットに入って行く。若菜はついていった。ライトで照らすが人影は見あたらなかった。そして石山が店舗の中を照らしてみる。
 「あ…!今の奴らは盗みだ!レジがこじ開けられている!それに物色した後がある。奴らはこの騒ぎに便乗した泥棒だったんだ!」
 「えっ…?」
若菜は驚いた。こんな状況、家族や知人の無事を心配したり、続く余震に恐怖を感じているのが普通な状況の中、盗みを思いつく人間がいる事に驚いたし信じられなかった。
 「殆どのレジが壊されてる。高級品も運び出したんだろう…。こんな時に何をしてるんだ!」
憤慨する石山。
 「酷い…。私には理解できません…。石山さん、そんな悪い人達がたくさんいるとしたらまず住人の安全を守りましょう。子供やお年寄りが心配です。すぐに警備に当たりましょう。」
 「ああ。そうだな。危害にあったのが人間でなくてよかった。」
2人は無人のアウトレットを後にして住民が避難している体育館へと向かった。


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