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LADY GUN
【推理 推理小説】

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 静香が命を落とし、約1ヶ月後に復職した若菜。まず磨きたかったのが銃の扱いだ。もしもっと真剣に皆川からの指導を受けていれば田口と面向かった時にしっかりと対応できたはずだ。もっと言えば静香を死なせずに済んだかもしれない…、何よりその思いなくして自分の未来はない、そう思っている。時間が許す限り若菜は銃を握り火薬にまみれた。
 若菜が復職し走り出した矢先の事であった。射撃練習をしていた時、的が大きく揺れ始めた。そしてゴゴゴゴゴという地鳴りとともに激しい揺れに襲われたのであった。
 「な、何これ…!」
今まで経験した事のないような揺れだ。壁が激しく軋む。本能的にヤバいと感じた若菜は射撃練習場を飛び出し階段を登った。同じように逃げる署員達は署内から表へ出る。なおも揺れる地面。横に縦に体が揺れる。誰も冷静な者はいなかった。電柱が倒れ道路に亀裂が入る。空からはコンクリート片が落ちてくる危険な状態だ。地球の終わりさえ予感させた。目の前の信じられない光景にただただ怯えるしかなかった。
 2011年3月11日に起きた大地震…、そう東日本大震災だ。揺れは断続的に続いている。島田は車まで行きテレビをつけた。若菜も島田の車に急ぎテレビを見る。
 「こ、これは酷い…。まずいぞ、津波警報が出ている!」
 「津波…?」
若菜は数年前にスマトラ沖で発生した津波を見て、自分がイメージしていた映画でよく見る大津波とは実際全然違うという事を思い知らされていた。容量オーバーで溢れた水が濁流となり街を襲うという恐ろしい光景…、それが今自分の住む日本で起きようとしている事に恐怖を感じた。
 「間もなく仙城県石巻市に津波が到達する模様です!繰り返します。間もなく仙城県石巻市に津波が到達する模様です!海岸付近にいらっしゃる方は急いで高台に避難してください!繰り返します!」
大勢の署員達が車を取り囲みテレビを見ていた。放送局も見ている側も緊迫感に襲われている。津波は仙城県のみならず北の岩足県、南の福山県、そして若菜が住む千城県と太平洋沿岸全体に発令されていた。石巻市にそう変わらない時間に千城県沿岸にも津波が到達する予想だ。
 「一体どうなってしまうんだ…」
固唾を飲んで見守っている中、各地で津波に襲われ街が水に飲み込まれ崩壊していく光景が映し出される。
 「何て事だ…」
絶句するしかなかった。若菜は口を抑え、溢れる涙が止まらなかった。
 「あ…お母さん…!」
我に返る若菜。母と兄弟の安否が心配になる。すぐに電話をかけるが全く繋がらない。テレビでは次々に惨状が伝えられ不安はどんどん募る。そんな中、ようやく電話が繋がった。
 「家の中はグチャグチャだけど、とりあえず家もみんなも無事よ。安心して?」
 「良かったぁぁ…!」
腰が抜けた若菜。
 「若菜はしなきゃならない事がたくさんあるだろうから、家の事は心配しないで困ってる人を助けてあげなさいね?分かった?」
 「うん。(強いなぁ、お母さんは)」
麗子の強さは是非見習いたいものだと強く思った。
 「津波被害の出た小洗地区に行くぞ?十分注意するんだぞ?上原は石山と同行だ。いいな?」
 「はい!」
10人の中央署員が応援に向かう。


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