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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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再会-6

 さすがにじろじろ見ることができないが、うつむき加減でコーヒーカップに運ぶ、すぼめられた唇を盗み見た。「おいしい」と言ってこぼれる白い歯も盗み見る。性的魅力を強く感じ、首の筋肉が引きつりそうになりブルッと震えた。
(田倉はキスをした。進藤さんのつるつるの白い歯をなめまくり、可憐な唇をしつこく吸った。ああでも、進藤さんも)
 奈津子がほほえんでいる。
(進藤さんが吐く息も、唾液の味もヤツは全部知っているんだ!)
 己の世界に入りつつある。
(どんな匂い、味だろう。知りたい、でもだめっ。進藤さんを性の対象にしてはいけないのだ。家で待っている『進藤さん』しかだめだ)
 奈津子はコーヒーカップを見つめている。
(でもヤツは進藤さんのオマ、あそこを口でした。あの香りと味、色も形も知っているんだ。きっと可憐なアヌ……ああ、何ということだ!)
 石橋もコーヒーカップを見つめ背を丸めてため息を漏らしたが、はっとして背を伸ばした。
(いや違う、違うぞ。佐伯も知っているじゃないか! ああ、くそ! 佐伯の方がずっと前に知っているのだった。大学時代の進藤さんの全てを知っているのだ!)
「何が違うのですか?」
 自分の世界に浸っていた石橋は妄想から解き放たれた。奈津子の目がまっすぐ石橋を見つめている。
「え? ぼ、僕、今何か言いましたか?」
「ええ、しまったとか、大学のことだとか、色のこともおっしゃっていました」
 心の中で悲鳴をあげた。
「た、たぶんひとり言です。何も気にしないでください。進藤さんのことではありませ……い、いや、進藤さんのことですが、いやいや、全然関係のない進藤さんのことですので」
 奈津子はくすっと笑った。
「石橋さん、あの頃と全然変わっていませんね」
「すみません」
 石橋はしゅんとした。
「あ、ごめんなさい。変な意味ではなくて、何というか、純粋な青年のままっていう意味です。そういう男人ってすごくいいと思います」
 石橋は顔が熱くなるのを感じた。
「石橋さん、お子さんはおいくつ?」
「僕はずっと一人なんです」
「そうでしたか。ごめんなさい。わたし失礼なことを言いました」
 うろたえている奈津子に今度は石橋が慌てた。
「あ、あの、僕は進藤さん一筋でしたから。あっ、いえ、そういう意味ではなくて、いえいえ一筋は一筋ですが、結婚してくれる女性なんか全然いませんので。過去も今も未来も、はい」
「そうなんですか、こんなにいい人なのに。あの、今さらですけど、あのときはすみませんでした」
 奈津子は神妙な表情で小さく頭を下げた。昔、石橋の告白を断ったときのことを言っているのだ。
「いえいえいえいえそんな、とんでもないです。僕がばかなことを言ったせいで、すみません」
 奈津子の困った姿が何よりも辛い。話題を変えようと焦った。
「えー、そうだ、娘さんはお元気ですか?」
「娘がいるってよく分かりましたね」
「あっ、いや、もしかしたら、おそらく仮定として推測するに、たぶんそうではなかろうかと」
 ほほえむ奈津子にうろたえながら「すごい美少女で。進藤さんに似て本当に美しくて、はい」と際限なく墓穴を掘り進む石橋であった。


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