気の置けない存在-9
でもそう思ってたのは、あたしだけだったようで。
夕日が校舎を金色に染めるある日の放課後、あたしは友達だと思っていた男の子に告白をされた。
『オレ、ずっと前からくるみのことが好きだった』
角張った顔を真っ赤にさせて、目を泳がすような不器用な告白。
そわそわ落ち着かない素振りが、いかにその想いが真剣かを物語っている。
なのに、あたしは心のどこかがスウッと冷えきっていく感覚に陥った。
『友達』として見せてくれた、大らかな笑顔がセピア色に褪せていく。
友達が欲しいと、それだけを望んでいたあたしには、彼氏とか付き合うとか、そういう次元の話をいきなりされても戸惑うだけ。
あの頃のあたしは、『彼氏』よりも『友達』がいればそれで充分だった。
だからあたしは、彼の気持ちは嬉しかったけど、『今は付き合うとか考えられない』と、そう返事をした。
友達として、今まで通り仲良く付き合っていきたい、そう願いながら。
でもそんな都合のいい展開が、十代の繊細な男の子に通用するわけがなく。
次の日から、彼はあたしを避けるようになってしまった。
そうして、あたしは友達を失ったのだ――。
それからも、男の子達と仲良くなる機会はあったけど、距離を縮めた頃にみんな、友達以上の関係を望み始めた。
そうなると、親切にしてくれた男の子達は最初から恋愛関係になるのを前提に近付いてきたのではないか、と邪推をしてしまう。
陰険ないじめをしてくる女子、下心を持って近付く男子。
次第にあたしは『友達』という存在に疑心暗鬼になっていった。