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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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ワスレナグサの花言葉-11

たくさんの人でごったがえしているのに、陽介達の姿だけにピントが合っているかのように、あたしは二人から目が離せなかった。


胸は、やっぱり痛む。


人の流れを遮るように立ち尽くすあたしを、すれ違う人、追い越す人は「邪魔だな」と言わんばかりに、露骨に嫌な顔を向けていく。


だけどそんなのどうでもよかった。


陽介と恵ちゃんは、手を繋いだまま人でごった返す駅の改札口を潜り抜けようとするところ。


痛む胸を押さえながら、あたしは彼の背中を見つめた。


ねえ、陽介。


やっぱりあたしはまだあなたが好きみたい。


諦める努力はしてるのよ? ガーデニングなんかして気を紛らわせたりして。


ガーデニングなんて似合わねー、なんて笑うかもしれないけどね。ちょっとしたきっかけがあって、花の種をもらったんだ。


陽介の家の近くの花屋さんなんだけど、知ってるかな?


花が咲くのは来年の春って、種をくれた人がは言ってたけど、ほら、あたしはガーデニングなんてしたことないし、ちゃんと花を咲かせてくれるか、正直自信はないけれど……。


花が咲いたら、きっと前に進める気がするの。


そしていつか、この胸の痛みがいつか癒えて、誰かを好きになれたら、今度は自分の気持ちを伝えられるような人間になって、幸せになりたい。


だけど、あたしは他の誰かを好きになっても、陽介のことを忘れることはないと思うよ。


後ろ暗い関係だったけど、あたしは本気で愛していたから。


改札をくぐった陽介と恵ちゃんの後ろ姿は、あたしに気付くことなく、どんどん小さくなっていく。


鼻の奥のツンとした痛みをこらえつつ、あたしは目を細めて陽介の背中を見送る。


ねえ、陽介?


あたしの蒔いた花の種。ワスレナグサっていうんだ。


小さいけど可愛くて、綺麗な青の花が咲くんだって。


この花が咲いたら、あなたにも見せてあげたいけれど、それはできないってわかっているから、代わりにこの花言葉を捧げるよ。




「……私を忘れないで」




ふと呟いたワスレナグサの花言葉。


それは、人混みに消えていった陽介の後ろ姿のように、誰の耳に届くことなく、都会の喧騒に消えていった。




〜終〜






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