本多夏子-4
「えっ、何これ?」
画面にはあたしの愛称の【なっちゃん】の文字が浮かんでいた。
どうして、着信画面にこの名前が出てるの?誰よこれ?あたし、こんなの登録してないよ。
第一あたしの知る限り、あたしの周りで【なっちゃん】て呼ばれてるのは、名前が【夏子】のあたしだけだ。
あたしは、恐る恐るあたしの知らない【なっちゃん】からの電話に出た。
電話の相手は、しばらく無言だったけど、思いもしなかった声が聞こえてきた。
『ほ、本多?オ、オレ、赤木だけど…』
うっそ…
『本多、聞こえる?』
絶句するあたしに対して、不安げな智くんがまた声を掛けてきた。
『本多、聞こえてるなら返事して』
「は、はいっ!」
バカ!声が裏返ってるじゃない!
『良かった。本多だよね』
智くんの安堵の雰囲気がスピーカーから伝わった。
「ど、どうして赤木くんが…」
緊張の余りに後の言葉が続かない。
『あのさ、さっきぶつかった時に、オレのスマホと本多のスマホが入れ換わったみたいなんだ』
「えっ?」
予想もしなかったことに、あたしの頭が一瞬真っ白になった。
『本多が今持ってるスマホはオレのなんだよ。で、オレの持ってるのが本多のやつ』
「ウソ―――!」
でも、落ち付いて考えると、智くんとあたしのスマートフォンは同じだったことを思い出した。何故ならスマートフォンを契約する時に、智くんが持っていたタイプを、コッソリチェックしていたあたしが真似をしたからだ。もちろんカバーもだ。