佐藤家の過去-2
数日後、いつもの朝の教室でボーと窓を眺める樹里奈、彼はあの後ちゃんと帰れたのか
疲れが溜まってしまったのでは?・・とあらゆる心配を掲げているとソコに
「有難う、佐藤君助かったわ」
重い物を運び大変そうな女子に、代わりに運んでいって
「おー佐藤、此間は宿題教えてくれてサンキューなっ!」
樹里奈の大好きな彼が何時に無くソコに居る、その光景を幸せそうに見つめる
・・・しかし
「ゴホッゴホッ!」
咳をするしゅう、樹里奈は咄嗟に彼の元へ駆け寄り
「大丈夫、しゅう?」
心配な顔で苦しそうな彼を見つめると、大袈裟だなぁーとでも言わんばかりの表情で
「うん、大丈夫大丈夫、ゴメン心配掛けて・・」
「・・しゅう」
樹里奈は考え込み少し間を置き彼に言葉を掛ける
「そう・・良かった、でも無理はしないでね・・」
ホントは心配なのダガ、彼に余計な心配を掛けぬまいと言葉を慎重に選ぶ
・・その傍ら、胸が締め付けられる様な思いで彼の幸せを祈る・・しかし
放課後、練習を終え残って居る後輩が居ないかどうか部室等を見回って居ると
一人蹲り背を見せ、何やらコソコソしてる部員を見掛け声を掛ける
「何してんの?こんな所で・・」
「!!きゃ、キャプテン」
その部員はギクッ!・・と振り向き、その場を逃げようと勢い良く去ろうとし
それをしゅうが腕を掴み引き止めるとその拍子に
「あっ・・」
床にその部員の手から何かが落ち、それをしゅうが拾うとそれは・・
「・・!!これ、ドーピング剤じゃ?」
目を思いっきり見開きその禁断薬を見つめる
「・・・・コレ、君の?」
落ち着いた表情でその部員に尋ねるも、彼は脅えた顔で首を強く横に振り
「そうか、だよな!疑ってゴメン・・」
心の荷が落ちたしゅう、聞くと帰る支度をしいざ部室を後にしようとした時ふとその
ドーピング剤を目にし色々と気になって調べてる所に彼が来たらしく
「スミマセン、キャップテン・・俺が余計な事をしたがばっかりに・・」
「君はただ見つけてしまっただけだろ?、大丈夫だよ・・あんな物何かの間違いだって
誰かが科学室からうっかり薬品をここに落としたとかで・・」
ショックを受ける部員を宥めるしゅう
その後、部員と別れるも別れ際、肩を叩き最後まで部員を気遣う
ピンポーン
「・・・・しゅう、居る?」
彼が気になった樹里奈は、彼の家まで学校からそのまま足を運ぶも不在の様で・・
「はぁーー・・」
顔が沈み溜息をつく
彼にあって今朝風邪気味だった彼の為に何か栄養の出る手料理でも作ろうと
でしゃばりに来たのだが
クイが残り不服ながらも彼の家を後に背を向けたその時
「・・ねぇ、貴女ウチに何か用?」
凛とした声が後ろから聞こえ、振り向くとソコにしゅうの姉、幸子の姿があった・・
「おーーいっ!!急げよ!配達指定時間に遅れるっ!」
「はいっ!今行きますっ!」
配達員姿のしゅうと先輩がいそいそと重い配達物を抱え、お客の下へと急ぐ
「ったくっ!道路工事とか聞いてねーしっ!」
普通であれば指定時間にも間に合い、時間に余裕を持って配達が出来たのだが
不運にも行く先ざきで道路工事があって行き止まり、何度も回り道をしとんだタイムロス
となってしまい、案の定時間に追われていて
「ゴホッゴホッ!」
今だ喉の痛みが収まらず、その上頭痛も今朝より悪化してきて・・本来ならば無理はせず
家で寝ていなければならないのだが・・
「いやー!さっきからうるせーぞっ!耳障りダッ!」
「すっすみませんせん!うっ、ゴホッゴホッ・・」
お客の待つ部屋まで急ぎ足で向かいつつ苛々と先輩に文句を言われ
「・・お前、やっぱ休めば?さっきより咳の回数が増えてるしよ」
「ゴホッゴホッ!、いや、大丈夫ですやれます、スミマセンご心配掛けて・・」
彼は休む訳には行かないのだ、母親がふらふらと夜道を家出し、道路に入り込み
そして事故に遭い、その入院費が思ったよりも高く彼は自分の食費等を減らし
休日だった筈の日に出勤を申し入れたりと、これまで以上にボロボロの身体に鞭を打ち
精を尽くし
「・・ふぅ、やっとついた意外と遠いな、おいっ!代金幾らだっけ?請求書!」
息を切らしつつしゅうに預けた請求書を渡す様、申すが・・
「・・・ゴホッ」
どうやら聞こえてなく、と言うより聞く耳を立てる気力がなく、それに対し先輩が
「請求書っ!とっとと渡せっつてんだろっこらぁっ!」
「えっ?あ、はいっスミマセン!」
先輩の怒号にビクッと我に戻り慌ててポケットを探るが、特にそれらしい感触はなく
「・・!、あ・・トラックに置いたまま・・」
どうやら渡されたが、目的地に着くまでポケットにはしまわず近くに置きっぱなしに
していたそうで・・
「てめーっ何やっんだよっ!それじゃー金受け取れねーだろうがようっ!」
「スミマセンっ!すぐ取りに行って」
「バーカッ!それじゃ時間掛かるだろっ、ただでさえ時間押してるのに・・」
先輩は彼が取りに戻ると往復で結構時間が掛かると踏み、恥を覚悟でお客に代金を
訪ね様とインターホンを押し、その重い手をドアノフに手を掛けると
「はーーいっ!ご苦労様ぁ2018円ですよねっはいっ!」
案の定、向こうの客が丁寧に代金をお釣の出る事は無いよう用意しておいて待っていて
くれたようで、危機が救われたが・・
「はぁ・・」
重い足取りでトラックに戻る二人
「あのっ、ほんとスミマセンでしたぁっ!」
今更ながら先輩に謝るしゅう・・、ダガ彼は怒鳴りはせずポケットから自分のケータイを
取り出し徐にボタンを押す
「・・あの、先輩?」