性奴隷-13
翌日の早朝の事だった。ある河川敷の物置小屋に制服を来た婦警が張り付けられているという通報が城南署あったのは。それはすぐに捜査本部のある中央署にも伝えられた。泊まり込みをしていた静香はすぐさま現場に向かう。
現場に到着すると小屋の屋根に十字架があり、そこに誰かが張り付けられていた。
「急ぐわよ!」
既にパトカーが何台か停まっていた。車を降り2人の刑事を引き連れて走る。
「あ、あれは…」
心臓がドキッとした。知っている顔だ。いや、むしろ良く知っている。
「聖子…ちゃん…!?」
張り付けられているのは拉致され行方不明であった同じ中央署所属の婦警、弓野聖子だった。
「聖子ちゃん!!」
大声で呼び掛ける聖子。しかし反応がない。一刻も早く降ろして病院で手当てをさせないと…、そう思った。
「早く!早く助けて!!」
小屋の屋根によじ登った刑事。その刑事から衝撃の言葉が伝えられた。
「だ、ダメだ…死んでる…。」
「えっ…?」
耳を疑った。何かの間違いかと思った。
「撃たれている…。胸を撃たれている…!」
「撃たれてるって…」
静香にとって銃で人間が死ぬという事はデリケートな問題だった。足から力が抜ける。口元を手で抑えながら地面にそのままへたり込んでしまった。
騒然とする現場。何人かの刑事が十字架から聖子を解き、そして屋根から降ろす。到着した救急車から担架が運ばれた。力なく担架に乗せられた聖子。血の気がない。誰が見ても背筋がゾッとするような光景だった。静香はへたりこんで口元を抑えながら運ばれて行く聖子の亡骸を見つめている事しか出来なかった。
遅れて到着した中山は聖子の遺体が救急車に乗せられたのを見送ってから静香に歩み寄った。
「大丈夫か皆川?」
まだ呆然としていた。
「は…い…」
全然大丈夫ではなかった。
「くそ!!まさか殺人事件に発展するとは…!」
拉致された婦警が殺害される事態になるとは予測していなかった。事件が誘拐事件から殺人事件に変わった瞬間だった。静香は気付くと署に戻っていた。どうやって帰ってきたのか全く覚えていない程の強い衝撃を受けた。
「銃…」
静香は騒然とする署内の片隅でただただ呆然として立ち尽くしていた。