はじめてのデート-1
日曜日の朝 自宅
俺は平日よりも早く目が覚めた。楽しみな日だけは早起きをするってなぁ
そう思いながら部屋から出てリビングにやってくると母さんが朝食を作っていた。
「おはよう 母さん」
「あら、おはよう 匠。今日は早いわねぇ 普段から早起きをしてくれると助かるなぁ」
「何だよ、悪かったなっ ニヤニヤして言う台詞かよ」
「嬉しいのよ。でもさあんたに彼女ができて母親としてはちっと寂しいかな」
「なっ、何気味悪いこといってんの?俺はマザコンじゃないし」
すると母さんは目玉焼きを皿に盛り付けて俺に渡すと少し寂しい顔をしていた。
今日は玲奈と買い物に行く話はしてある。
その後俺は朝食をすませて家を出るときに珍しく母さんが玄関まで見送りにきた。
「匠、ちょっとこっちに来なさい」
「何だよ母さん」
俺を近くにこさせると母さんは俺を抱きしめた。
何か恥ずかしいけど昔、ガキの頃はよく泣くとこうやって抱きしめてくれたっけ
久しぶりに嗅ぐ懐かしく優しいにおい 母さんのにおいだった。
「大きくなったね・・・父さんの体格に似てきたわ」
「あっそ」
「よし!じゃ、行ってきなさい!玲奈ちゃんをしっかりリードしなさいよ」
バシッ
母さんは俺の背中を一押し叩く
「わーってるよ!いってきますっ」
「いってらっしゃい」
たしか昨日の夜に来たメールのないようだと駅前南口で待ち合わせかっ
足早についたのでまだ少し時間があった。
しかしさすが田舎だな人が少なすぎ
いくら桜学園都市と言われてもこれじゃ名前負けするんじゃないかと心配になるのを考えていると黒い高級車が走ってきた。
こんなちんけな場所に高級車でくるとはバカなのかと思った。だがなぜか車は俺の前に停止した。
すると厳ついスーツ男が後部ドアを開けた。
コイツら見たことあるぞ。たしか竜宮組で玲奈の母さんに平手打ちくらった奴 しかも片方の頬っぺたに絆創膏をつけていた。ってことは竜宮組の車で玲奈がやって来たと確信した。
「いってらっしゃいやせ。お嬢!」
「うん。ご苦労様 帰りは連絡しますね」
「しかしお嬢、お一人で大丈夫ですかい?誰か若けぇのつけやすか?」
「心配いりません 1人ではないし匠くんと一緒ですから」
「はん!あんなひ弱な野郎がお嬢をまもれやすかい?ちょうどこんな感じの坊主でしたが」
厳ついスーツ男が俺を指さしして言った。
すると玲奈は言った
「すみません。そのひ弱な野郎ご本人ですが」
「げっ!しっ失礼しやした!」
「もう謝っても遅いわよ 母さんに報告します!」
「ひいいいいいぃ!お嬢!あ、姐さんだけはご勘弁を」
厳ついスーツ男の同情も届かず玲奈は携帯で連絡した
「もしもし、母さん。私の彼氏をバカにするので厳重な教育的指導をお願います」
途方にくれて全身が灰になる厳ついスーツ男
お大事にと俺は心のなかで無事を祈った
「おはよう。匠くん」
「おはよう、玲奈。あのさ俺の呼び方なんだけど匠でいいよ 」
「ね、それさ分かって言ったの?」
「えっ何のこと?」
「ううん。やっぱ何でもない!じゃ行こう、匠!」
この時も玲奈が何が言いたいのかわからなかった。
しかも既に水面下で別の人間が暗躍しているのを俺と玲奈は気づいてもいなかった。