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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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蜜月2-1

 彼女は佐伯とのセックスで田倉が与えるようなオーガズムを得ることはない。当初のうぶな性行為からもそれは明白だ。佐伯は彼女の体を開発することを怠っている。というより、それだけの知識や経験が不足しているのかもしれない。
 ずっとそう思っていた。だが、それは違う。彼らには必要のない行為だったからだ。その方面の知識や経験など必要とせずとも幸せな家庭を――夫婦生活を――築くことができるからだ。今さらながら次元が違うことにと気づいた。だが彼女はもう別の世界を知っている、と考え直すが、膨らむ嫉妬心を消すことはできなかった。
 小さな頭部を抱え込むと耳に熱い息を感じた。手のひらで後頭部を抱いたまま大きなストロークに変えていく。粘膜をこねる音は彼女の耳にも聞こえているはずだ。直線的な規則正しい出没運動は最終段階であることは彼女の体に刻み込まれている。揺れていた両脚が腰に巻き付いてきた。
 ――佐伯にもするのだろうか? 
 嫉妬心を払拭することはできないが両足で腰を抱いてくる行為は嬉しかった。後ろに手を回し彼女の脚がクロスしているのを確認する。彼女の太ももに緊張が走っていることに満足する。足首をぎゅっとつかんで悦びを伝えた。あえぐ唇をふさぐと鼻息を荒くして小さな舌を絡めてきた。いじらしい行為に応えるため強く抱きしめてやった。最終段階に向けたスパートをかけた。
 ――そのときだった。ケータイの着信音が耳に飛び込んだ。
 無視しようと思ったが一度聞いてしまった着信音は波が引くように田倉の体を冷していった。
 会社へ着くと外出もあるため雑踏の中でも聞こえるよう、音が出るように切替えてある。退社時には必ずマナーモードにするのだが哀訴のような彼女の声を聞き、早く逢いたい焦りと興奮で完全に失念していた。着信音は明らかに田倉のケータイからだった。
 体内で萎えを感じ取った彼女は、きつく絡めていた両脚を恥じらうように緩めた。ある意味静寂になった室内で着信音だけがけたたましく鳴り続けている。
「でられたほうが……」
 耳元で彼女のかすれた声が聞こえた。自分でも急速に萎えていくのを感じた。こうなっては仕方がないので、「すみません」と謝り彼女から離れた。ベッドボードに放り投げてあったワイシャツの胸ポケットからケータイをつかんだときは、だらんと垂れ下がっていた。ベッドに横たわったままそこに視線をあててから田倉を見て小さくほほえんだ。彼女は田倉のそんな状態をほとんど見ていないかもしれない。頭を掻きながら背を向け手に取ったケータイに視線を落とした。
 ――そして、息を呑んだ。
 弾けるように振り返ると、電話をする田倉に気遣って背を見せていた。彼女らしい配慮であった。無防備に振り向いて、今の顔を見られなくてほっとした。ショックに歓喜が入り交じった奇妙な表情だったに違いない。
 両手で胸を抱き華奢な背中とほっそりした襟首を見せ、気怠げにシーツに頭を垂らすようにして上にある脚を下の脚よりも折り曲げ、こちらに尻を突き出すように横たわっていた。くびれた腰からぐっと盛り上がったクラッシックギターのような曲線の、汗で光る豊満な尻に釘付けになった。切れ込みが深く、このように突きだしても内部は見えない。心を掻き乱すように情欲を煽った。
 力がみなぎったのは、そのせいだけではない。わき上がった性欲を解消するためには、どんなことでもしてしまう気がした。たぶん狂っているのだろう。四十五度の角度で屹立しているペニスを見下ろし、田倉はそう思った。彼女を初めて見たときからずっと正気ではないが。触れると、とっくに彼女の愛液は渇いていた。
 短く応対すると相手の声が聞こえた。
『もしもし部長、今大丈夫でしょうか?』 ――電話をかけてきたのは彼女の夫だった。


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