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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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蜜月2-2

「はい、大丈夫ですが」
 彼女と逢ってすぐにセックスを始めたため、今まで会話らしきは全くしていないことに気付いた。声がかすれたのはそのせいだろう。
『今日、部長が急いで帰られたので。それで何かあったのかなと思って、少し心配になりまして』
「それは申し訳ないです」
 心臓発作で苦しむ寸前はこんな感じなのだろうか。心臓が口から出そう――極端な誇張だと思っていた。こんな不規則な鼓動は初めての経験だった。
『あの、娘さんかご家族に何か?』
「いやいや、全く、そういったことではありません」
『そうですか、安心しました』
「心配していただいて、すまないね」
 普段佐伯と話すような言葉遣いと、彼女に知られないよう敬語を混ぜたため、ちぐはぐな話し方になっていることに気付く。
『部長は今どこに?』
「わたしは……実家にきています」
 背後でシーツのこすれる音がした。嘘をついた田倉の方を見たのかもしれない。振り向く勇気はない。
 興奮は収まらず、今も全血液がペニスに流れ込んでいるような気がした。針を刺すとはじけるのではないか。本気でそう思ったくらいだ。
『ああ、実家へ行かれたのですか。そうでしたか。いきなり電話してすみませんでした』
 佐伯が電話を切ろうとしたので田倉は慌てた。
「いや、いいんですよ。お袋がですね……えー、古くなった電気製品を始末したくて、電気屋に取りに来てもらうよう電話をしたのです」
 田倉は佐伯に対し、敬語で通すことに決めた。再びシーツのこすれる音が聞こえた。彼女の性格上、自分のことのように嘘を恥じているかもしれない。
「それでおやじ殿に二階から降ろしてもらう手はずだったんですが……」
『あ、急な用事でどこかへ行かれたのですね』
 話し終わらないうちに佐伯は言った。別のことを言おうとしていたが「そう……組合の会合があるらしくて、夕方から出かけてしまったのです」と話を合わせた。
『それでご母堂さまは困って部長に電話をした、というわけですね』
 佐伯の声はうれしそうだった。彼のよいところは親身になって相手の話を聞くことだ。親身になりすぎて逆に自分から話を崩していってしまう傾向もある。だが彼と接した人たちは「本当にいい人」と口をそろえて言う。人柄で実績を積んできたタイプだ。
「よく分かりますね。その通りなんです」
 電話を受けた瞬間に欲望を成し遂げる方法がひらめいた。この考えに執着していることを彼女に気付かれたくない。家に帰れば何気ない会話の中で、佐伯が田倉に電話したことが彼女に悟られてしまう可能性はある。それでもいいと思っている。そうなった場合でも連絡すれば彼女は必ず逢いに来る。そう確信している。
 呼吸が浅くなっていることに気づいた。人倫に外れた行為を始めようとしているからだ。田倉は体の向きをくるりと変えた。横たわったまま彼女はこちらを向いていた。完全な形のペニスを見て驚いている。
 片足をの乗せると、かすかな音をたてベッドがしなった。迫る田倉に彼女は後ずさるような仕草を見せた。ぞくぞくするような背徳感と高揚が交錯する。ペニスで熱せられた血液が体内に循環しているようだ。武者震いを彼女に見られたかもしれない。
 妻が膣内射精される寸前に、まさに夫がストップをかけたのだ。


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