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貴方を、護りたい・・
【純愛 恋愛小説】

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彼の笑顔-3

「よいしょ!・・ふぅ、この二つだけ?しゅう君」
樹里奈の母が灯油を車で運んでくれる事になり
久しぶりの力仕事に、汗の掻いた額を拭く樹里奈母・・

そんな彼女に気を使い遠慮の言葉を掛けるも、軽く弾き

「・・じゃーこれで全部ね、それじゃー」
と言って母が車内に乗り込もうとすると

「ちょっと待ってぇ!」
樹里奈が突然声を挙げる・・

「コレ、家に持ち帰るのよね?」
「・・そうだよ?他に何処に持って行くって言うんだい?」

樹里奈は、家に灯油を運ぶのに普通は6つくらい必要な筈なのに、彼が2つしか
必要としない事に疑問を抱き彼を問い詰めると

「・・それはぁー、その、えっと・・」
目が泳ぎ、あからさまに彼の悪い癖が出たようで「ホントにコレだけでいいのか?」と
攻め寄ると・・

「じゃー悪いけど後二つお願いできますか?」
樹里奈の根気勝ち・・と言うよりは彼が自らやって欲しくてお願いした・・
と言う感じで、その声は妙に力が入り、拳を強く握り・・
彼の急のお願いに一瞬戸惑うも、本心はその言葉がとても嬉しく

「・・オッケー、分かったよー!」
そう言って残り二つも運ぶ為、店員の元へ急ぐしゅう
そんな彼を何処か穏やかな顔で見つめる樹里奈


「ホント、スミマセン!車で運んでもらったダケでなく家の中にまで運ぶのを手伝って
貰っちゃって・・」
彼の家に着き、親子が進んで彼の灯油をせっせこと玄関近くへ運んでくれて

「いいのよ、お母さんには良いダイエットになるから・・ね?」
「なぁーにが、ね?・・よ、この子はぁっ!」

夜の人気の無い閑静な住宅で、会話を弾ませる親子、その様子を見たしゅうが

「あっはは、仲が良いんだね」
思わず噴出すしゅうに振り向く親子

「まぁねー、腐れ縁って奴?・・違うか」
「そうよ今夜はアンタの好きなオムライスにしよう思ったけどやめようかなーそれなら」
「えー?じゃー何にするのさ!今晩の夕飯」
「そーねー・・じゃーたまにしゃぶしゃぶにでもしようカネ?」

「!しゃぶしゃぶ・・肉・・」
そのワードに何処か食い付くしゅう

「ほぉー、なんか豪勢だねーなんかあった?」
「なんかってホラ忘れたの?今日はお父さんのお給料日じゃない・・」
「あぁ、そうだった」

「へぇー、蓮見サンのトコ、今晩しゃぶしゃぶなんだ、いいね」
何処か羨ましそうに問いかけて

「そうよ、毎月お父さんの給料日にはちょっとリッチなディナーと貸す訳で」
「・・でも毎回そのたんびに二人して言うのよ「もぅお腹一杯・・」って」
「なぁーによぉ、お母さんだって私とお父さんより大して食べないじゃない・・」
「仕方が無いじゃないお母さんなんだから」
「何それ、理由になってないし・・」
「兎に角っ!それだけはちょっと難点ね・・」


「そっかー、それじゃ今日はホント有難う!蓮見サン、ホント助かったよ・・またね」
話を打ち切り、今日の別れを言い自宅に戻り親子に背を向け家に入ろうとした、その時

「待ってぇっ!!」

突如声を挙げ、何事かと振り向くと・・

「ねぇ、良かったらしゅうも食べに来ない?家に来て・・」
「えっ?」
彼女の突然のご招待に驚くしゅう

ダガ案の定、流石にそこまで甘える事は出来ないと強く断り
その提案には母も驚きの様で
「大丈夫だよウチは・・、それに一度家に来てるじゃない・・」
「あっあれは・・その」
「別に構わないよね?お母さん」

母に同意を求め少し考え込み、そして
「・・えぇ、是非うちに食べに来なよ」
「で、でもそんなせっかくの」
「今度もまた余すと思うから是非食べに来てくれると助かるんだけど・・」
娘の考えを読み機転を利かす母

「でもあんまり遅いと・・その母が」
「・・お母さん?今うちに居るの?」

「あっ」
今彼のお母さんは病院で眠っている事実に気づき

「明日は週末だし、そんなに時間とか気にしなくたって」
考え込むしゅう、ふと暗い我が家に目をやり、そして・・


「・・・・それじゃー、お言葉に甘えてっ!!」

その発した声は今まで何事にも控えめ気味だった彼らしくもない、とても明るく元気な
まるで遠慮を知らない無邪気な子供の様な言い方だった

そして彼はさっそく軽い支度を済ませ彼女達の車に同乗させてもらうことに・・


「えーっ?2回も自宅を往復して灯油を運ぶつもりだったの?」
「うん、それしか方法無いし、一昨年からそうしてる」
樹里奈の家へと走る車で会話を弾ませる二人

「君こそ、どうしたの?コンビニ帰りの様だけど」
「うん、今晩のおかずの材料の買出しにね」
「そっかー、御免・・俺のせいで」
「あっはっはっはぁだから言ってるでしょ?今晩はお父さんの給料日だって・・
別にしゅうが来るから急遽予定を変更したとかじゃないから」

「だから、心配しないで遠慮なく食べてねっ!」
そう言う彼女の口調はとても優しく、ニコッと無邪気な白歯を見せ

しゅうは頬を赤く染め彼も空いた口が閉じず

「・・有難うっ!」

「・・どういてましてっ!」

「・・あのさ・・その・・」

「うん?」

「あっ、いや何でも・・」

明るいムードが漂う中、車は確実に彼女の家へと向かって走ってゆく・・


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