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蔵の嗚咽
【近親相姦 官能小説】

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第一章-5

(タエは嘘をつかない……)
ほっとした気持ちがそうさせたのかもしれない。私はタエの布団に横になった。
「ふふ……」
タエは何も言わずに笑っていた。無性に甘えたい想いにかられていた。そして彼女に触れたかった。

「タエ、ここで寝ていい?」
「いいけど、ここ暑いよ」
「いいよ。ぼく、怖いんだ」
「何が?」
タエは扇風機のタイマーをかけると電気を消した。一瞬暗くなり、やがて小さな灯りが部屋になじんできた。

 私は昨夜の奇妙な声のことを話した。その後、怖くなってタエの部屋に逃げ込んだことも。……
「タエ、いなかったね。トイレ行ってたの?」
タエは天井を見ていた。薄暗い中でも目の動きがわかる。その横顔をじっと見ていると、顔が私に向けられた。
「うん。トイレ行ってた」
「ぼくがオシッコしてたのわかった?」
「……うん……」
「じゃ、あの声聞こえたでしょ?」
「知らないけど……フクロウじゃないの?」
そんな鳴き声じゃないと思いながら、少しずつタエに寄り添っていった。

 その話はどうでもよくなっていた。
タエの匂いがーーそれは石鹸や汗などが湿っぽく混ざったーー流れてきて、吸い込むと息苦しくなった。
 夏掛けをはだけているので浴衣を押し上げた胸が目の前にある。その膨らみを見ているうちに、気がつくと私の手は乳房の頂に置かれていた。タエが誘導したのである。
 私が驚きもしなかったのは、そうしたいと思って行動する寸前だったからだと思う。導かれなくてもきっと触っていただろう。

「ぼく、タエのオッパイ、好きだよ」
「そう……」
「だって、柔らかいんだもん。あったかいし……」
確かめるように揉むと、タエはもぞもぞと体をくねらせた。
「坊ちゃん……」
男のような低い声である。
「あのな、坊ちゃん」
黙っていると浴衣の胸をはだけ、スリップの肩ひもを下げて乳房をあらわにした。

「しゃぶってみな。赤ちゃんみたいに……」
言われるままに体を起こし、乳首に口をつけた。行為の意味など解ってのことではない。オッパイに触れる感激がそうさせたものだった。

 乳房は柔らかく、大きく、押しつけると鼻まで沈んでいく。汗でしょっぱい。
「はう、はう……」
タエは苦しそうな息をして目を閉じ、枕から頭が落ちるほど反っていた。
「タエ、どこか痛いの?」
「ううん、ちがう。気持ちいいんだ。坊ちゃん、もっとしゃぶって」
「いいよ」

 知識など何もない。私はただ丸い乳首の舌触りが面白くてころころと口の中で転がしていた。まるで飴玉を舐めるように。……
 何気なくもう一方の乳房に手を当てると、タエは胸を迫り上げて声を洩らした。
「ううう……坊ちゃん、もっとぎゅっとして……」
掴むと、
「はう、はう、はう……」
胸が大きく上下する。さらに私が吸いついている乳房を自分で揉み始めた。
「はう、はう……」
見たこともないタエの異様な姿に驚きはあった。だが、
(タエは歓んでいる……)
わからないながらその確信があり、そのことで言い知れぬ昂奮に見舞われ始め、私は夢中になって乳首を交互に舐め回した。

「ああう……」
いつの間にかタエの脚は布団を挟んで締め上げていた。
「うう……うう……」
 やがてタエは目いっぱい顎を上げて伸び上がり、しまいには大きく体を弾ませた。
(タエ……)
びっくりして体を離した。
「坊ちゃん……」
「大丈夫?」
「うん……」

 乱れた呼吸が少しずつ落ち着いていった。そして大きく息を吐いてから、
「このこと、誰にも言っちゃだめだよ。言ったらもう遊んでやらないよ」
「うん……」
タエの顔は汗でびっしょりである。
(秘密……)
私は心の中でタエと共有の秘密を持ったことを嬉しく思った。同時に得体の知れない予感めいたときめきが胸に滲んでくるのを感じていた。

 それでもやはりまだ子供であったのだ。夜祭りに行って屋台でりんご飴を買ってもらったり、伯父たちと川下りに行ったりしているうちにタエとの秘密も泣き声のことも忘れてしまった。実際は忘れてはいなかったのだが、他の楽しいことが先に立っていたというべきか。ともかく、私の性の目覚めはまだ日の目を見ない地中の真っ白な芽のようなものであった。


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