彼の名はしゅう・・-4
和やかな会話が、殺風景漂う夜景を打ち破り楽しい時を感じる・・
ダガ、その和やかな空間に異物でも混入したかのように、暗い表情を作る彼
樹里奈はそんな彼の表情を見落とさず気になって声をかけると、ふいにポツリと言う
「賑やか・・なんだね、ホント」
?マークが頭の上に浮かぶ、「そうなのよー」とかノリで言っても良かったがあえてそれは口に出さず
「大切にした方が良い、家族は・・代わりなんて居ないんだから・・」
「しゅう・・君」
それからしゅうは私を無事に送れた事を確認し、角を曲がり自宅付近を後にする
ダガ、私は彼の去って行くその後ろ姿があまりにも暗く重い事を知り、ふと彼が去った
角に同じように曲がるとソコに彼が居た・・
「うっ・・う、母さんなんで・・、父さん一体何処いっちまったんダヨ・・」
壁に小さくうずくまり、涙で赤くなった顔を片手で掴み小さく泣いていて・・
「・・・しゅう、君」
私はふと春華の話を思い出す、彼の父は彼と母を捨て何処に行ったのかそして今も生きているのかも分からず音信普通で、彼の母も彼と同居はしているものの、何処か普通では
なく、なんかの病気に掛かっているとかで、家のことは一切せず、買出しも料理や洗濯
等全て、彼が一人で毎日やっているとかで・・
春華も1度心配して尋ねるも「大丈夫!」と太陽のように明るい笑顔で答え
泣きじゃくるしゅう、私は想う・・ソレが何を意味しているのかを、ソレは
彼、佐藤しゅうは苦しんでいる、まだ13歳で
背負い切れない不幸とそのどうしようもない理不尽に・・
いまだ、泣きじゃくる彼をジッと見つめる私
ドクンッ
心の中で何かの衝動がかれる
ドクンッ
私の中で何かが目覚める・・それは言葉では言い表せ無いような・・
でも、私は想った
彼を救いたい!
彼は何も悪くない!何も悪い事何てしていない!
なのに・・なのにどうして彼がこんな目に遭わなければならないの!
限りない貰い涙を流したごく普通の少女 蓮見 樹里奈は
決意する・・
彼 は 私 が 護 る 絶 対 に 不 幸 に さ せ な い !!
そしてこの決意が相手の幸せを第一とし、己の犠牲をなんとも想わん
心優しき少年 佐藤しゅうと、そんな彼に心打たれ、彼の悲しすぎるその弱弱しい
背中を目にした、ごく普通の少女 蓮見樹里奈がのちに大津波より大きく
大嵐よりも激しい苦痛と困難が待ちわびる事になることを今の二人には
知る由もなかった・・
序章「彼の名はしゅう・・」終
次章「第一章・護りたいのに・・」 作成予定