誘導-1
「さて、やっと捕まえた。いたずら電話の犯人を。」日登美はまじめな顔で、ジッと亮介を見つめた。これでずっと不愉快だった出来事が解決する、日登美はそう思った。
「ごめんなさい。」
「こんな顔してたんだ?ところで、どこに住んでるの?話すわよね?もう逃げられないわよ。」
亮介が描いた都合よいエッチな展開とは違い、全ての素性を話さなければならなそうで、「犯罪」の二文字すら頭に浮かんだ。血の気すら引いてくる感じに全てを白状するしかないと思った。
「大原口に住んでます。」
「へー、近いね。前に私の事知ってるって言ってたけど、最近でしょ?知ったの。どうやって知ったの?」
「はい。この前電話してから・・・・」
「ふ〜ん。この前電話してから??それからこの辺をうろついてたわけ?どうやって家の事知ったの?」
亮介はここ一週間の出来事を正直に話した。話の中で胸が苦しくなっていた事も話してしまった。日登美にとって亮介は子供と変わらない、全てお見通しで、どうにでも誘導できた。
「なるほどねー。家にも中一の男の子がいるけど、近頃はゴミ箱に丸まったティッシュが毎日入ってるもんなー。男の子ってみんなそうなんだねー。」
日登美は軽く下ネタにもっていき亮介をからかっていた。
「だけどこんなオバサンじゃなくて彼女作ればいいじゃない?いないの?」
「うーん?なんかそうじゃなくて・・・日登美さんが・・」
亮介の返事を曖昧に聞きながら日登美はテレビのリモコンを取りに動く。二人の距離が少し詰まった。いや、日登美がわざと詰めて亮介を唆したのだ。
「私も悪かったわ、こんな事になるなら、この間の電話でからかうんじゃなかった。失敗したなー。」
「からかうって・・?判ってたんですか?」
「そりゃいたずら電話で鼻息荒くしてゴソゴソ聞こえればねー。でも、ここまで来ちゃうとは・・困ったわ。」
「ごめんなさい。」
「私ね、今は夏休みで子供達も田舎に行ってて、丁度主人が週末使って迎えに行ってるから誰もいないけど、普段は誰かいるし、困るんだけど。私の事好きだとか言われても何もしてあげられないし、もう今日限り何も無かった事にしたいんだけどなー。」
「ホントごめんなさい。」
日登美はテレビのリモコンをテーブルに置きながら亮介の顔を覗き込んで、
「約束してくれる?」優しい笑みを浮かべて聞いた。
「はい、申しません。」
「本当に約束できる?」床で握り締めている亮介の手に手を乗せて聞いた。決定的な挑発だった。亮介が我慢できなくなる事を日登美は確信している。
「やっぱり駄目です。ごめんなさい。」そう言うと亮介は突然日登美に覆いかぶさるように口づけをした。日登美は少し抵抗をしながら、唇を軽く開いた。しかし、亮介は口をつけたままで深いキスにはならなかった。
日登美が亮介の唇を舌先で軽く触れる。刺激を受け亮介が舌を日登美の唇に入れていく、恐る恐るゆっくりと入れると日登美の舌が絡み付いてきた。リズミカルに亮介の舌を舐め上げる、亮介の呼吸が荒くなるほどに激しく舐め上げていった。
「ごめんなさい。」突然日登美から離れ亮介は謝った。日登美はクスッと笑いながら立ち上がった。
「暑いね。」そう言って隣の部屋の窓を閉め、エアコンのスイッチを入れた。
「こっちの部屋の方が涼しいよ。」タンスがあり、おそらく寝室と思われる部屋に亮介を呼んだ。
「初めてだったんだ?キスしたの。」
「うん。」亮介は頷く。
「暑い暑い。いきなりビックリさせないでよ!」ノースリーブのポロシャツの胸元にエアコンの風を受けながら日登美は言った。
「こんな事したんだから、絶対に今日限りにしてよね!」
「はい。」思い通りに誘惑される亮介が日登美は愉快でたまらなかった。
「あなた返事するけど、そんなおちんちん大きくしてるのに信用出来るの?」この状況で、若い亮介がどうこう出来るはずがない。焦れば焦るほどズボンの膨らみは目だって言った。
「もう、どうしていいかわからなくて・・」亮介の思考回路はオーバーヒートした。