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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-7



気が付いたら次の日で、漫画喫茶だった。

「あり得ねぇ」

大学時代以来の失態に眩暈がする。
雪見をタクシー乗場まで送った記憶だけが微かに残っていた。

「もう絶対あいつとは飲まない。」

固く誓ってみたが、11月の15日、彼女とまた俺は『ゼロ』にいた。

俺が広島に行くまでの数ヶ月。しかも月1。終着点の見えている関係に俺も雪見も安心して飲みに行けた。

「佐伯は広島について来てくれる彼女とかいないわけ?」

「研究が恋人ですから。」

ホントだった。広島行きが決まって離れていった女が一人いた。

「そういう雪見こそ、この5年どういう恋愛してたわけ?」

そんな込み入った話も再会して5ヶ月目の2月には聞けるようになっていた。

4年も一緒にいた大学時代よりも俺達は確実に近づいていた。

「本読んで憧れていたことは一通りやったかなぁ。不倫にも手を出したし、朝起きたら隣に昨日出会ったばかりの男が寝ているとかもあった。」

無邪気に嘘かホントか分からないことを笑顔で返してくるが、内容はそんなに笑えるものではなかった。

「昔と一緒だよ。一人の人とずっと、ってのは難しい。あ、でも大人になったよ。泣く時、マスカラ落ちないように泣けるようになった。」

彼女の大学時代の華麗なる恋愛の噂を知らないわけではなかった。
それでも彼女はどこか寂しそうで何かに無言で怒っているようなところがあって、その危うさに手を差し伸べたくなる男の気持ちは分からないではなかった。

俺は、このままどこかに際限なく落ちていきそうな彼女を、支えてくれる誰かが現れてくれることを祈らずにはいられなかった。

「来月で最後だね。こうして佐伯と飲むのは。」

そう。半年なんてあっという間で、もう俺は来月には広島という時期になっていた。

「15日に雪見と飲んで、16日に行くよ。それまでに荷物は全部送るつもりだし。」

「なに?東京最後の夜に飲んでくれる女が私しかいないわけ?」

雪見があまりに嬉しそうに笑うので言い出せなかった。

14日は、ツヅキの結婚式だと。


結婚式。
懐かしいメンバーが顔を揃えた。

ツヅキは人望があつかったため、サークルの後輩も幾人か来ていたし、同期のヤツラはほぼ全員揃っていた。
...雪見を除いて。

「ツヅキ君がこんな純白なお嫁さんを貰えるとは思いもしませんでした...」


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