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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-6

? ツヅキに『彼女』がいることを皆の前でバラす雪見。
? 亜紀ちゃんの不安。
? 俺が思っているより雪見は俺を信頼していなかったというガッカリとした気持ち。

その3ピースで俺は、6年前のある出来事を思い出していた。

亜紀ちゃんとツヅキが付き合ってまだ間もない頃、亜紀ちゃんが俺に電話を架けてきた事があった。

「都築先輩が女の人と飲みに行っちゃってそのまま帰って来ないの。どうしよう。」

半泣きしている亜紀ちゃんをどうにか宥めて事情を聞き出すと、ツヅキは就職の決まったサークルの女友達と飲みに行ったまま、夜中まで帰ってこず、連絡が取れないということだった。

うちのサークルは院に進む奴や公務員試験を受ける奴が多く、その時期に就職する人間は限られていたので、相手が雪見だということはすぐに分かった。
俺は、雪見が就職が決まったことを俺にすぐに教えてはくれなかったことに軽いショックを受けた。
しかし亜紀ちゃんはそれどころではなく、俺は必死に彼女を安心させようと言葉を紡いだ。

「あいつら、仲良いよ。けど心配することないよ亜紀ちゃん。あいつらがくっつくことなんてあり得ないから。」

言いながらホントに?と自問自答したことを覚えている。あいつらが惹かれあっていることなんか一目瞭然じゃないか。それが友情であれ、愛情であれ。
2人はとても似ていた。一見広く浅くしかやっていないように見えるが、ホントは深く考えすぎて頑張りすぎて、自分の身を自分で食べてしまうような危うさが。
そして、抜き身の剣同士がお互いを刺し違えたがっているような雰囲気が2人の間には確かにあった。

ツヅキは、亜紀ちゃんという頑強な鞘を見出し、選び、見事に収まった。

じゃあ雪見は?
セーフどこか、都築が原因なんじゃねーの?

今、目の前にいる彼女を見る。
昔からポーカーフェイスはお手のものだった。
彼女の様子から真実を嗅ぎとるのは難しい。
酒は八海山に変っている。明日は休みとは言え、どこまで飲むつもりだよ。焼酎と日本酒を代わる代わる飲む女なんていうのも、よく考えてみると相当変人だ。

「そっかぁ・・・都築も遂に結婚かぁ。」

深く吐き出すように雪見が零すと、一ノ蔵が2つ運ばれてきた。

「何コレ?」

嫌な予感がして恐る恐る尋ねると

「分かってるくせに。『飲み比べ』だよ。よくしたじゃん、大学の時。」

にっこりと花の開くように微笑む。
この笑顔が曲者なのだ。これにやられて『飲み比べ』に参加してしまったら最後。
その日は家に帰れない、漫画喫茶コースなのだ。

「俺、酒弱いの知ってるでしょ?」
「だからハンデあげたんじゃん。今の時点で私が何杯空けたと思ってるの。」

一生懸命の抗議はあっけなく敗れた。

「分かりましたよ。飲めばいいんだろ、飲めば。」
「よっ。佐伯、男前っ。」

雪見の掛け声を受けていっき飲み。それから俺の記憶は途絶えた。


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