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坂を登りて
【その他 官能小説】

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後編-6

 竹川が帰った後、小夜子はいつ眠ったのか記憶にないほど熟睡した。
(よっちゃん、ずいぶん遊んでるんだな……)
キスだけの前戯でいきなり挿し込まれて何度イッタことか……。

「よっちゃん、遊び人だね。相当経験あるでしょ」
朝起きて軽くキスするとすでにいきり立っていた。
「俺、商売人しか相手がいないから」
「お見合いの話なんかないの?」
「農家のところにくる嫁はいないよ」
「そんなことないよ」
たしかに最近の傾向はそうかもしれない。
「絶対いるよ」
竹川はそれには答えず、小夜子の胸を揉みはじめた。
「よっちゃん、ごめん。今日、お店があるし、少し寝ておかないと」
「そうか、悪い……」
竹川は頭を掻きながら立ち上がって着替えだした。
「出してあげようか?」
「いや、いいよ。俺、帰るから」
「裏口から出てってね」
小夜子は布団に座ったまま見送った。


 妙な縁だなとつくづく思ったのはゼンリョウと寝た時だ。この時は小夜子が誘ったのではないが、許したのは彼女の意思である。

 開店前にふいにやってきて、何かと思ったら、結婚してくれと言い出した。
「なあに?お寺、暇なの?」
笑って聞き流していると、真剣な顔である。
「実はお見合いの話があるんだ……」
「なにそれ……だから?」
それと結婚が結びつかず、小夜子はコンロの火を止めてカウンターから出た。

 県北部の寺の娘との縁談が持ち込まれたのだという。でも自分は子供の時から小夜子が好きだった。その気持ちは今でも変わらない。言い出せないでいたがいい切っ掛けができたので思い切って言いに来た。ゼンリョウは昔と同じ緊張した面持ちで言うのだった。

「お寺の方なら一番いいじゃないの。お仕事にもプラスになるし」
「都合で結婚するんじゃないよ」
「それはそうだけど、将来も大切よ。その方といつ会ったの?」
「いや、まだ……」
「それじゃ何もわからないじゃない」
「会ってからじゃ遅いと思って」
「何言ってるの」
ゼンリョウは俯いて、少し眉根を寄せた。しばらく黙って店の中をうろついて小声で言った。
「俺、女と付き合ったこと、ないんだ……」
「だったら、余計お付き合いしてみないと……。もしどうしても合わなければお断りすればいいのよ」
「そしたら、小夜ちゃん……」
小夜子は慌てて首を横に振った。
「そんな気持ちじゃ相手の方に失礼よ」
何とか説得してその場は帰した。

 もしまた結婚してくれと言ってきたらどうしようかと悩んでいると、十日ほどして現われた。
「どうした?」
訊くと、照れ臭そうに相好を崩した。
「なんだか嬉しそうね」
先週、家で会って、話は進んでいるという。
「よかったね」
小夜子はほっとした。
「いい人なのね?」
「うん……」
けっこう美人でおとなしそうなので自分に合っている気がすると言った。
(なんだ、あたしと正反対じゃないの)

 ところがゼンリョウの様子がおかしい。報告は済んだはずなのに店内をぶらぶら歩き回ってなかなか帰らない。さっきまでの笑顔も消えて落ち着きもない。
「どうしたのよ」
「え?……」
「何か言いたいことがあるんなら言いなさいよ」
「うん……」
 話を聞いて小夜子は呆れた。その相手とは結婚するが、童貞は小夜子に……と、真顔で言うのだった。
(なによ、それ……)

 聞きながらさすがに憤慨して、彼を睨みつけていた。人を何だと思っているんだろう。自分でも身持ちがいいとは思っていないが、軽く見ないでほしい。あたしだってプライドはある。同級生だからってけじめがあるだろう。

 じっと見据えていると、彼の目から涙が一筋流れ落ちた。
(もう、まったく。弱いのよ、涙って……)
 男のくせに、どっかで女買って来い……。思いながら、さらに話を聞いているうちに妙に納得してしまった。
 小夜子を想い続けていた理由以外に、寺で見た彼女の『アソコ』がいまだに頭を離れなれずにいる。それほど強烈な衝撃を受けたというのである。だからそれを振り払いたい。それには小夜子の体を知る必要がある。知ってしまえば幻惑もなくなる。
「憧れだったから……」
小夜子を出発点にしたいのだと真面目な顔で言う。
(あたしの責任なの?……)
頭のいいゼンリョウから言われると自分が悪かったように思えてくる。もしかして竹川が喋ったのかと疑念が浮かんだが、そうではなさそうで、わかったようなわからないような、こんがらがった気持ちになって、小夜子は溜息をつくしかなかった。

「聞きたいんだけど……」
小夜子は話を変えた。
「そんなに想ってくれてたんだったら、なんで高校の時でもラブレターくらいくれなかったのよ」
ゼンリョウだけでなく、あの時の四人ともそうである。年賀状すらもらったことはない。
「それは、小夜ちゃんのアソコ見ちゃったから、とても出来なかったんだ」
「なんでよ」
「なんでって言われても……あんなすごいの見たら……」
ゼンリョウは困った顔を見せるばかりであった。

 そういうものなのかと思いながら、何もわからない。ただ、いわば男女の『最終目的地点』をのっけから見てしまって、中学生という年齢を考えれば順序がおかしくなったということかもしれない。でも、
(アソコのせいばかりにされてる……)
 結局、頭がまとまらないうちに仕方なく了承して日時を指定した。
(何をしているんだろう、あたしは……)
暗い思いではなく、可笑しくて一人笑いをしていた。 


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