投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

透明な滴の物語U
【同性愛♀ 官能小説】

透明な滴の物語Uの最初へ 透明な滴の物語U 0 透明な滴の物語U 2 透明な滴の物語Uの最後へ

狭い家-1

第1話 狭い家

朝のひんやりした冷気が秋の到来を感じさせる10月も半ば。
郊外に位置する団地は、朝の目覚めを迎えていた。
元々は田畑だったこの地に大規模な団地が建てられたのは昭和の経済成長時代のことである。
それ以来、修繕を繰り返してきた団地であったが今では老朽化が進んでいた。
団地の所々では建て替え計画も進んでいる。
しかし、まだほとんどの建物は色あせたペンキのコンクリートにひびが入ったような建物である。

その古い団地の一室では、祐梨と麻衣の姉妹が朝の準備で慌ただしい時間を迎えていた。

祐梨が花柄のパジャマ姿でダイニングに現れると、妹の麻衣は高校に登校するため早くも制服に着替え、テーブルで朝食を食べているところだった。
向かいに座り、表情のすぐれない麻衣を見ると姉の祐梨は謝った。
「ゴメンね、麻衣ちゃん。夜、起こしちゃったよね?」
昨夜、祐梨が帰宅したのは午前1時を回っていた。
入社二年目の祐梨であったが、会社の業務処理がかさみ連日残業を強いられていた。
そのうえ、昨夜は会社を出た後に同僚と飲みに出かけたこともあり、帰宅が深夜になってしまったのだ。
酒が入り少し「ハイ」になった状態での帰宅は、眠りについたばかりの麻衣を起こさせるに十分だったはずである。
「ううん。そんなことないよ、お姉ちゃん」
そう否定する麻衣だが、肌は荒れ不機嫌そうな表情は明らかに寝不足のように見えた。

祐梨と麻衣の姉妹は、実は異母姉妹である。
祐梨が9歳の時、この家に来た麻衣はわずかに3歳であった。
小さな子が来たなと思っただけで祐梨に嫌悪感はなかった。
麻衣の方も、自我が目覚める前に出会った姉だった。
ふたりは一緒に暮らすうちに自然に仲良くなっていった。
しだいに大人になると、ときには異母姉妹であることを意識する場面もあった。
しかし異母姉妹であることの自覚は、本当の姉妹なら発生したであろう自我の衝突も、むしろ回避する方向で働いた。
不思議なことであったが、異母姉妹であることで却って仲良しの姉妹でいられたのである。
仲良しでいられた理由はもう一つあった。


透明な滴の物語Uの最初へ 透明な滴の物語U 0 透明な滴の物語U 2 透明な滴の物語Uの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前