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坂を登りて
【その他 官能小説】

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前編-2

 十四歳の春に自慰をおぼえた。月の物の最中、むず痒さに耐えられず、脚を捩じっているうちに、得もいわれぬ心地よさに見舞われて体がかっと熱くなってきた。その頃まだ知識はない。下腹部に手を入れたのは痒さに対する無意識の行為だった。汚れているので綿の当たっていない上の辺りを指で掻いた。その時、図らずも最も過敏な部分に触れた。
「うっ……」
一瞬、息が止まり、声を洩らした。慌てて指を引いた。そこが何であるか小夜子はその時知らない。

(いい気持ち……)
それはたとえようのない甘美な快感であった。もう一度指を進める。イボのような突起を触ると自然と体が硬直して、次には逆に力が抜けてゆらゆらと揺れているような感じになった。
(おかしくなっちゃう……)
何だかわからないながら、とんでもないことになりそうな予感が過った。
(やめよう……)
思いつつ、指の動きは速くなっていく。やめられない。快感がいっそう高まって呼吸が荒くなってきた。
 我に返って手を引き抜いたのは明らかな湿りを感じたからだった。出血したと思ったのである。

 びっしょり汗をかいていた。股間がずきずきと疼いている。もっと触っていたいと思いながら、ぐったりしてしまっていつの間にか眠っていた。
 ふたたび手を伸ばしたのは数日後、生理が終わってからである。興味からそうしたというより、むず痒くないのにそこだけ熱をもったように火照っていて触らずにいられなくなったのである。触れればまたあの気持ちよさが味わえる。股間の感覚でそう思った。

 隣は兄たちの部屋、台所を隔てた奥に両親の部屋がある。女の子の小夜子だけが四畳半の自分の部屋を持っている。
 九時を過ぎた頃、親が店の後片付けを始めた音が聞こえてきた。兄たちは何か話している。
 電気を消し、小夜子は息を殺して寝床へ潜り込んだ。その行為がいいことか悪いことか、その判断をする認識はそもそもなかったが、秘かに行うという意味では、いけないことをする緊張感があってどきどきした。
 下腹部へ向かう前に乳房を掴んだのは考えてのことではない。肌着に触れている乳首がくすぐったくて位置を直そうとしたのである。

「!……」
声を呑んだ。全身に痺れが走ったのだった。
(どうして……)
そっと揉むと、すぐに漂うような快感が流れ始めた。どこか深いところで体が溶けていくような感覚であった。
(ああ……これもいい気持ち……)
自然と体が伸びあがってしまう。
 慌てて飛び起きたのは股に何かが流れたからだった。血だと思った。
(終わったはずなのに……)
 明かりをつけてパンツを脱いでみると出血ではない。透明な液が下着に着いている。
(何だろう?)
股を開いてのぞき込む。その液は脚の付け根まで伝っている。オシッコではない。液を掬うように局部を指で掃いた。
「く……」
小夜子はそのまま布団に仰向けに倒れた。あとはよく憶えていない。夢中で湧水の源に指を当てて弾き、そしてわからなくなった。寒くて真夜中に目を覚ますと、電気は点けっぱなしで下半身は露出したままだった。


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