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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ファイティングガール〜』-3

普通、告白した方はなかなか味わえない感情を、私は都築先輩の腕の中で充分に感じていた。

だから、全く心配しなかった。

「サークルの女友達がさ、就職決まったんだって。お祝いに2人で飲んでくるよ。」

4月になって幾日か経った日だった。

都築先輩はきちんと報告してくれていたし、そんなのに「行かないで」という程、子供でも我儘キャラでもなかったから。

「お祝いですし、仕方ありませんね。ただ、帰ってきたら電話ください。安心したいから。」

そう言って笑顔で送り出した。

私はその日、普通に過ごした。都築先輩が女友達と飲みに行っているという状況を忘れるくらい。

けれど、夜中の12時を過ぎても電話が鳴らなかった時、急に不安になった。

「電話していいよね。彼女なんだから。」

30分位、こんなトコで電話かけたらうざいんじゃないか等とぐじぐじ悩んだ末、都築先輩の番号を押した。

‘お客様のお掛けになった電話は、現在電波の届かないところにいるか、電源が入っておりません’
無機質な声がした。

「嘘・・・。」

突然胃に鉛が落ちてきたような気がした。
どうすればいいのか分からない。

こういうのって普通なの?12時過ぎまで別の女と飲んでるって・・・そのままどこか2人で行っちゃったりしないよね・・・

(しまった。せめてその人の名前だけでも聞いておけばよかった。)

そう思ったけど、結局聞いていたとしても電話が繋がらないんじゃどうしようもなかった。

私たちは、こんな小さな電話一本でしか繋がっていないのだ。

こんなものが繋がらなくなっただけで、不安で不安で仕方なくなる。

でも・・・何もしないわけにはいかない。

携帯の電話帳を開き、あ行から順に探す。
使えそうな人・・・使えそうな人・・・

「佐伯先輩・・・」

さ行で指が止まる。都築先輩の親友。この人ともゼミが一緒だったため、たまたま登録されていた。

そう言えば、佐伯先輩にだけは私と付き合っていることを打ち明けた、と都築先輩が言っていたっけ。

夜遅すぎるかな、と一瞬思ったが構ってられなかった。
2コールで佐伯先輩は電話にでてくれた。

「亜紀ちゃん?」

佐伯先輩は驚いたようだが、すんなりと私の話を聞いてくれた。
私は随分落ち着きを失っていたらしく、先輩はまず、深呼吸しなよ、と言ってくれた。


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