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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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希望か絶望か・・・?W-1

「あれが葵さんの結界・・・」






(さすが葵さん・・・なんて優しい光を放っているんだ)





葵がゼンを誘導すると結界はダメージのないシャボンの玉のように三人を受け入れ、それぞれ結界の内側へと降り立った。






「葵様っ!」






勢いよく扉が開き、息をきらせて走ってきた神楽が葵を抱きしめた。






彼の長い黒髪が風になびき、葵へとまとわりついた。






「おはようございます神楽さん、お体の調子はいかがですか?」






そっと彼の胸元に手を置いて顔を覗きこむ葵を神楽は愛おしそうに見つめている。






「葵様のおかげです・・・あなたにお力を注いでいただいてから本当に体の調子が良くて・・・」





まだ葵の背へと腕をまわしている神楽の腕をゼンが勢いよく払った。






「いつだかの偽の神官か・・・今は俺がいることを忘れるなよ?」






一歩下がった神楽がゼンを見やり鼻で笑った。






「これはこれは雷帝ゼン様・・・貴方様がいらっしゃらないお陰で、昨夜はとても助かりましたよ?葵様と燃えるような素敵な夜を過ごせましたから、ね?」





流し目で葵へと視線を送る神楽は、よほどゼンに負けたくないようだ。もしかしたら男女間の駆け引きは神楽のほうが一枚上手かもしれない。





「・・・妄想はそれくらいにしたらどうだ?葵がお前を男として見ていないことぐらいわかる」





ゼンは激昂した様子もなく、冷ややかな目で神楽を見下している。葵がそんなに軽い女ではないことを彼はよく知っているからだ。






「きょ、今日は、医者として私も同行させていただきました・・・っ!!」






その時、秀悠が自分の存在に気付いてもらおうと懸命に大声を張り上げた。






「・・・誰かと思えば・・・
葵様に守られてばかりの町医者の秀悠センセイもご一緒ですか・・・」






葵に想いを寄せる神楽にとって、秀悠さえ目障りで邪魔な存在だ。だが、葵が連れてきたのならば彼を追い返すわけにはいかない。






「秀悠さんはきっと皆の助けとなってくださいます。彼は優れた名医なのですからっ」





「・・・・」






微笑みあう葵と秀悠に何か言いたげな神楽は、ひとつため息をつくと葵に促され屋敷へと三人を招き入れた。









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