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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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希望か絶望か・・・?V-1

「・・・えぇ、神楽さんは激しく咳き込んだあと血を吐かれました。そして彼の屋敷にいた方にも同じような症状が・・・」






秀悠を抱きしめている葵の手に力がこもり、彼女がどれほど彼らのことを気にかけているかわかる。





「葵さん・・・」






「・・・もしかしたら伝染する病なのかもしれませんね。・・・診察してみないとわかりませんが、他に何か気になったことはありませんでしたか?」





「気になったこと?」







はっとしたように秀悠を見つめる葵は何かを思い出したようにゼンを振り返った。






「ゼン様、ゼン様の国に鉱山はありますか?」





「・・・鉱山?この世界では鉱物は山で採れるのか?」





世界は違えど、共通するものがいくつもあることは今まで彼と過ごしてきた中で理解している。ならば存在するものが酷似していることもあるのではないだろうかと考えていた。






「いえ、きっと山だけではないと思いますが・・・」





「鉱物の採れる場所なら俺の国にもあるぜ。中には危険なのもあるからな・・・見張りをたてて近づかないようにしてある」






葵と並んだゼンは、何やら思考を巡らせている彼女の顔を見つめている。





「ゼン様・・・その危険なものとは・・・」






「色々だな・・・膨大なエネルギーを発するものや、体の組織を破壊させるものもある。・・・力のない者が近づけば無事ではすまないだろうな」





「・・・ゼンさん、力のないものって・・・」






表情を曇らせた葵とゼンの顔を見比べて秀悠の声がわずかに震えている。






「ああ、お前のようなただの人間のことだ。強い者とは俺や葵、こいつの神官たちくらいのものだろう」






「そ、それって・・・、、、この世界のほぼ全員じゃないですかっっ!!」






「まだそうと決まったわけではありません。可能性の話ですよ秀悠さん、もし危険があっても私がお守りいたしますから」






大慌てする秀悠に葵が柔らかく微笑みかける。葵自身、次第に大きくなってゆく不安に嫌な予感を感じているからだ。






わずかに高度を下げたゼンが指を差して葵へと尋ねた。






「神楽の屋敷とやらはあれか?」






淡く光輝く葵の結界が視界の端に映り込んだ。






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