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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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出逢い-11

「すいません、これを下さい」

 かごに盛られたバナナをひとつ取り、渚の方に差し出した。彼女は「ありがとうございます!」と言って僕だと気づいた途端、意外という顔をした。

「久しぶり、どうしたの?」

 彼女は、美咲と違って昔から社交的な子で、学校でも男子に人気があって目立つ存在だ。

「話があるんだ。夕方、会えるかな?」

 僕は、渚に聞けば何か分かるだろうと考えた。

「夕方……いいけど、何?話って」
「その時に話すよ。メールして」

 了解を取りつけて、僕はその場を離れて買い物を再開した。側に美咲がいるから、あまり長くいて変に思われては元も子もなくなるから。

「えっと……これで全部だよな」

 買い忘れは無かったか調べてると、雑誌売場に海人の姿があった。

「また漫画か?」

 急に声を掛けられ、海人は一瞬、驚いた顔をしたけど、それが僕だと判り、ホッとした表情を見せた。

「びっくりした……脅かすなよ」
「別に悪いことしてる訳じゃないから、驚かなくてもいいだろ?」
「最近は母ちゃんがうるさいんだ。来年、高校だから勉強しろって」
「どこでも一緒さ。家の父さんだって時々、言ってくるから」

 目当ての買い物を終えた僕等は、自宅までの距離を、急ぐわけでもなく歩いた。

「この暑さ……昨日以上だな」
「まったく……」

 じりじりとした日射しと熱い空気が、僕等の身体を容赦なく痛めつけてくる。正直、うんざりして何もしたく無い気分だ。
 でも、この機会を逃がすわけにいかない。

「さっきさ、美咲と渚が青果売場で働いてたよ」
「それ、本当か!?」

 僕はたった今、見てきた事実と、昨日の美咲との間に繋がるものがあるという、自分の考えを話した。
 でも、海人はあまり気乗りしないみたいだ。

「なあ拓海……それ、あんまり関わらない方がいいんじゃないか」
「どうして?自分だって、心配してたじゃないさ」
「そりゃそうだが、もう子供じゃないんだし、放って置くのが一番だと思うけどな」

 拍子抜けというか、ちょっと裏切られた気分。僕を気遣ってくれる海人なら、もっと乗り気だと思ってたのに。

「──とりあえず、渚に事情を話して訊いてみるよ」
「ほどほどにしとけよ」

 僕は海人と分かれた。多分、海人の言ってる方が正しいと思うけど、やっぱり美咲は同級生だ。放って置けない。

(どうせ嫌われてんだ。どうなっても、これ以上は無いんだ)

 僕は一人納得し、自宅に帰って渚からのメールを待つことにした。



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