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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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出逢い-12




「父さん、ちょっと出かけてくるから」

 夕方六時過ぎ。渚からメールがあり、僕は晩ごはんの箸の手を止めた。

「なんだ?飯時に騒がしい」
「海人のとこ。すぐ戻るから、僕のはそのままにしといて」

 嘘を言って家を出た。同級生でも女の子と会うなんて言ったら、色々と勘ぐられそうだから。
 路地を下り切って、周回道を南へ駆けていく。五百メートルも走ると、昼間の購買所が見えて来た。

「こっち、こっち!」

 しばらく待っていたのか、渚は僕の姿に気づくと、強く手を振って呼び寄せる。

「拓海、おそいよ!」
「ごめん……これでも……急いだんだけど」
「美咲は先に帰ったから、歩きながら話そっか」

 僕逹は、渚の家に向かって、周回道をさらに南へと歩き出した。

「それで?何、話って」

 ここで僕は、自分の愚かさを知った。話の筋道を考えるのを忘れてたのだ。

「あのさ……」

 僕の焦りようを見た渚は、どう思ったのか、先に口を開いた。

「……わたし逹、高校が控えてるじゃない……だから、あまり付き合うってのは……」

 どうやら夕方の呼び出しが、大きな誤解を呼んだみたいだ。

「いや……そ、そうじゃないんだ」

 僕は誤解させてしまった事を謝り、それから美咲との出来事を、つっかえながらも何とか全部伝えた。
 渚は最初、恥ずかさを隠すように照れ笑いをしてたけど、話が美咲のことになると、急に真面目な顔になった。
 そして、全部を聞いた渚は、僕にこう言った──放って置きなさいと。

「海人にもそう言われた。でも僕等は同級生じゃないか?」
「拓海。わたし逹、小学生だった頃じゃないの。みんな顔形が違うように、考え方だって違うわ」

 悔しさがこみ上げた──父も海人も渚も、島の大人全部が「他人のことは構うな」と言いながら、隠し事も出来ない風潮を当たり前だと思ってる。

「そんな事は解ってる!でも、僕は、あんな美咲を見るのは嫌でたまらなかった。
 それが、さっきは渚と一緒にせっせと働いていた。一生懸命に……」

 こらえ切れず、つい、大きな声を出してしまった。

「……お母さんの所に、行く途中だったそうよ」
「えっ?」

 渚は突然、理由を語り出した。


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