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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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出逢い-10

「沙織さんこそ、言い方が乱暴ですよ」
「そうかしら?」
「そうですよ。僕、昨日は結構、傷ついたんですから」
「アハハハ!ごめん、ごめん」
 家までのわずかな間、僕は彼女の笑顔にドキドキが止まらなかった。この昂りを気づかれないよう必死に堪えて、隣を歩くのは大変だ。

「どうも、ありがとう」
「いえ……」

 そうして、楽しさはあっという間に終わりが訪れた。
 僕は、もっと話したいという強い思いから、とんでも無い事を口走った。

「あの、カメノテって知ってますか?」
「もちろん。昔、食べてたわ」
「今度、友達と穫りにいくんです。たくさん穫れたら、また持って来ますから」
「カメノテって、貴方……」
「それじゃあ!」

 それだけを告げて、僕は駆け出した。あれ以上、一緒にいるのは今の僕には無理だった。

 ──でも、最初にしちゃ上出来じゃないか!

 昨日と同様に、明かりに照らされた路地を走り抜けて行く。でも、気持ちは全然違う、躍り出したい気分だ。

 沙織さんと知り合いになって二日目。さっきまで疲れていた僕の足は、小気味よいリズムを刻んで家路を急いでた。





 翌日の午後。漁は休んでるのに、港はかなりの島民が集まって賑やかしい。
 貨物船が本土から入港した為だ。
 毎週日曜日、牛乳や肉、玉子に果物等の生鮮品や漫画、週刊誌等の雑誌、他にも雑貨や薬品など、生活に必要な品々を運んで来てくれる。
 この時ばかりは、乗降場の隣にある購買所に大半の島民が、品物を求めて一気に集まるのだ。

「ええと……肉と、牛乳、玉子に歯みがき粉」

 僕は、予めメモした買い物リストに従い、ごった返す中を縫うように品物を探し歩く。
 一角に平積みにされた漫画や週刊誌の前には、子供を含めて大勢の大人も群がり、無心に情報を貪っていた。
 因みに新聞も、一週間分がまとめて売られている。

「あれは……」

 そんな購買所の中で、僕は意外な光景を見た。それは青果や乾物、缶詰、雑貨等を扱ってる売場に、エプロンと三角巾をした美咲と渚がいたのだ。
 多分、日曜日だけ手伝ってるのだろう。二人は玉のような汗を流しながら、入荷した品物をせっせと並べては、威勢のよい声で買い物客を誘ってる。その姿は、とても健気で、一昨日の出来事が嘘のようだった。

(何で美咲は、あの時、あんな態度を取ったんだ……?)

 何か、事情があったんじゃないかと考えてしまう。

(確かめるべきだよな……)

 でも、沙織さんみたいに、他人に触れられたくない場合もあるから、強引に聞き出すわけにはいかない。

(そうは言っても、美咲は同級生だし)

 僕は決心して、二人のいる売場の方に向かった。


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