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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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様々なこと-13

「えっ?どういうことだ」

 でも、今回はちょっと違う。二人から「僕の意見に従う」というニュアンスの言葉が送られて来た。
 先日の僕に気遣って、意見を控えてると気づいた。
 本来なら、意見を交わして纏めたいけれど、日にちも迫ってるので、今回は「僕の意見で決める」ことにした。

「じゃあ、土曜日の昼一時に港で……と」

 二人から“了解”と送られて来て、二回目の見舞いの日程が決まった。
 でも、僕の気持ちは釈然としない。

(何だか……余所々しい感じ。いや、僕の思い過ごしだろう)

 悶々と、一人考えを廻らせても、答えなんか出るわけない。そう判って思考を辞めようとしても、いつの間にか、また考えを廻らせる。

(こんな堂々巡りをやってたって不毛だよな……)

 僕は立ち上がり、休憩室をそっと出た。事務所を通って乗降場の待合ロビーの窓から、桟橋の方を眺める。まだ、出航に向けた準備に忙しそうだ。
 踵を返して、今度は乗降場の外へ向かう。二時の出航まで、まだ三十分以上あるのでロビーに待つ乗船客も少ない。

「あっちい……」

 外は相変わらず暑い。風がないから、体感的には尚更だ。

 ──昔、この島を訪れた有名な詩人は、此処を“東洋の〇〇”と言ったらしいけど、確かに港の反対側にある観光地は素晴らしい景観だし、入り組んだ傾斜に建つ家々の赤い屋根で、その島に似てたんだと思う。
 でも、“似て異なる”という言葉ように、有名な詩人にも島民の心までは見抜けなかったようだ。
 もし、見抜く力を持ち合わせていたら、間違っても褒めたりしなかっただろう。

(後十五分。ちょっと早いけど……)

 そろそろ、仮眠中の父を起こ して乗船客の準備だ──乗降場に戻りかけた時、港の前の道を横切って行く者の姿に、僕の目は凍りついた。

(どうして……)

 強い日射しの中、海人と美咲が笑顔を交えながら、北の方へと歩いて行く姿だった。
 二人を見た瞬間、僕は雷にでも打たれたような強い衝撃を受けた。

(だから二人は僕に曖昧な返事をしたのか……自分達だけで、僕を放って置いて)

 悔しさが衝き上げてくる。奔走した自分が、実は一番不要な存在だったんだと解った途端、心から強い孤独さを感じた。



「貴女について思う幾つかのこと」様々なこと 完


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