希望か絶望か・・・?U-1
「そうですね・・・颯も無事届けることが出来ましたし、秀悠さんを連れて空から参りましょうか」
心地よい風を受けながら葵も空を見上げた。以前感じた神楽の屋敷での不穏な空気も秀悠やゼンがいれば何とかなりそうな気がする。
(神楽さんやローハンさん・・・結界の中でなら無事なはず。でも、あの奇病は一体どこから・・・)
葵の表情が曇ったのをゼンは見逃さなかった。彼女の不安を取り除くように、そっと背中へと手を添える。
「ゼン様・・・」
「そんな顔すんな・・・民に心を砕くお前も美しいが、やっぱり笑ってる顔が一番だ」
くしゃっと葵の頭をひと撫ですると、小走りに駆け寄ってくる秀悠の姿が近づいてきた。
「すみません葵さんゼンさん、お待たせしてしまいましたね!!」
息を切らしながら声を弾ませる秀悠にゼンは小さくため息をついた。
「人間ってのは弱い生き物だな・・・ちょっと動いただけで息切れか?」
「それが普通なんですよゼン様。秀悠さんここからは少し距離がありますので、私がお連れいたしますね」
葵がそう微笑むと、三人は人気のない木の生い茂った中へと足を踏み入れた。
・・・ゼンと葵の体から淡い光が発せられ、徐々に翼へとカタチを変えてゆく。ゼンの翼は鋭く力強く光を放ち、葵の翼は慈悲と清らかさに溢れていた。
茫然と見惚れる秀悠に、葵は差を差し伸べ・・・
「では参りましょう」
大きく広げられた翼は光の残像を残し、あっという間に町が小さく見えるほど高く上昇していった。
興奮した様子で秀悠が地上を指差し、懸命に葵に話しかけている。あまり遠出したことのない彼には全てのことが新鮮なのかもしれない。まして、上空から大地を見渡すことなど・・・この時代では考えられないのだ。
「おい・・・遊びに行くんじゃねぇんだぞ?」
呆れ顔のゼンに、微笑みで応えた葵は・・・
「きっと秀悠さんの力が必要になります。ローハンさんが倒れたときの、あの神楽さんの落ち着きは・・・きっとそれが日常的に起きているからなんだと思います」
「・・・葵さんはそれを"奇病"とおっしゃっていましたが、何かおかしな点があるのですか?」