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『正夢』
【青春 恋愛小説】

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正夢〜仲間〜-1

あれ…、何で俺二年の棟に来てんだ。俺の教室は一年棟なのに。
見慣れぬ教室には、やはり見慣れぬ奴らと、見知った顔がいた。そいつらの前で椅子を引き、腰を下ろす。
珊瑚、渉、そして……

日の落ちた廊下。見たことのない男…。こいつは…誰だ…?
そこで俺の意識は覚醒した。


今日から新学期が始まる。みんな浮かれ気分だが、俺はそうはいかない。クラスを変わるために馬車馬のように勉強したのだから。
「翔ちゃん、おはよっ」
「おぅ」
全てはこいつと一緒にいたいから…。
こいつは高瀬 恵(たかせ けい)…幼馴染みであり、妹のような存在でもあり…俺の彼女でもある。
今まで彼女など出来たことがなかった、どうすれば上手く付き合えるんだろうとか考えていたが、この頃は考えなくなった。
こいつとならずっと上手くやっていけるとか考えられるようになったんだ。
恵には嫌な思いもさせてしまったけど、これからは絶対に俺が守るって決めた。嫌な思いは二度とさせない。
のろけかな…などと思いながら学校へ着くと、沢山の生徒が昇降口のまえでクラス発表の掲示板をみて騒いでいた。

…俺の通っている光堂館《こうどうかん》高校は、全校生徒二千五百を越えるマンモス校だ。進学科、普通科から専門学科。果ては宗教、神学まであるという化け物学校だ。

クラスを決めるときは学力なので、恵と一緒になるために、三学期は気持ち悪くなるくらい勉強していた。

「おはよう!翔、恵」
後ろから聞き慣れた声が聞こえて振り返る。そこにはいつもの二人がいた。

「あっ!珊瑚ぉ〜、渉くん、おはよぉ〜」
「おう、渉」
「いよぉ〜……」
挨拶を交わして早速突っ込んでみる。
「どうしたんだ…?」
そこには、いつもうざいくらい元気な渉の姿はなく、憔悴しきった顔が浮かんでいた。
「何があったんだ?」
「珊瑚が昨日寝かせてくれなくてさ…困ったぜ」
「ちがっ…!勉強してたんでしょう!?恵が誤解するでしょ!!」
「昨日はとても激しくてさ…」
「えぇ〜!?珊瑚ちゃんの家に泊まってたの!?」
「ほら!高山くんのせいで誤解しちゃったでしょ!?」
なんともまぁ朝から騒がしいことだ。敢えて首を突っ込むような真似はせずに俺は見物を決めこんだ。
「ひどい〜!私も一緒に泊まりたかった!」
「「「そっち!?」」」
前言撤回。さすがにこれには突っ込まずにはいられない。やつれている渉ですら声を上げるのだ。恵が天然だということを俺たちは改めて認識した。


段々と掲示板を見た生徒たちが新しい教室へと向かっていく。掲示板の前が空いたので、見に行くことにした。
「みんな一緒だといいねぇ!」
恵の一言が俺と渉に重くのしかかる。一応三学期の期末は手応えがあったのだが…。
「なぁ、みんなで一斉に見ような?な!?」
渉が俺たちに念を押す。どうやら体と一緒に心も少し疲れているようだ。
だが、不安がなかったわけでもないので、渉の意見に従うことにした。


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