十八歳果実熟れ頃(1)-5
「迷いまくっちゃった」
美緒は入ってくるなり母親から預かったという佃煮の包みと地酒をテーブルに置きながら言った。
制服はグレーのスカートに白のブラウス。そのブラウスのボタンが今にも弾けそうに胸が突き出している。肥満ではない。思わず唸ってしまうほど均整のとれた体である。ウエストも締まり、引きしまっていながら腰や尻の肉置きはすでに母親を凌駕している。制服を通してでも肉感が伝わってくるようだ。
上野で地下鉄に乗り換えたまではよかったが、次の乗り換えを間違ってから乗ったり降りたりしてわからなくなってしまったという。
「電話すればよかったのに」
「携帯なし。合宿禁止なの。だから持ってこなかった」
「乗り換えのこと、聞いてこなかったの?」
「聞いたけど、あたしいい加減に聞いてたから。何とかなるかなって」
美緒と受け答えはしていながら、坂崎は半ば上の空だったといっていい。
たっぷりの乳房が圧倒的な量感をもって迫ってくる。
(これはすごい……)
心で大きく息をついた。
暑い中を歩いてきたので火照った顔には汗が流れている。むんむんと女臭が漂ってくる。
「大変だったね……」
言葉に詰まってしまった。
「お腹すいただろう」
「途中で駅そば食べたけどそれだけ。伯父さん、お寿司食べたい、お寿司。彩香に聞いた。美味しいって」
「そのつもりでいたんだけど」
「わあ、楽しみ。ビールがうまいんだな」
「おい、高校生だぞ」
「家でも飲んでるよ。ママと乾杯してるし」
「そうなのか」
「部活でも打ち上げなんかで飲むよ」
「ふぅん」
坂崎もその年頃には面白半分に飲んだことがある。それもいい。体を見れば堂々たる大人だ。
「それじゃすぐ頼んでおくか。この店、本店は築地にあって宅配は最近始めたんだ」
「だから美味しいんだ。伯父さん、希望を言うと、一つじゃ足りないと思う」
「わかった。じゃあ、アナゴと鉄火巻きでも別に頼むか」
「最高だね」
坂崎は心が躍るような心地になっていた。
「美緒ちゃんは体育会系だな」
「だってそうなんだもん。しょうがないわ」
遠慮のないざっくばらんな物言いをしながら、妖艶な肉体。彼はそのアンバランスな魅力に惹き込まれていた。
「伯父さん、シャワー借りていい?汗びっしょりだもん」
「いいよ。さんざん歩き回ったからな」
「ほんと」
美緒は大きなスポーツバッグを開けると、坂崎の見ている前でパンティとTシャツを取り出した。隠そうともしない。
「ざっと浴びてくる」
「使い方、わかるね」
「うん、たぶん」
制服の後ろ姿の腰が左右に揺れる。引き締まったふくらはぎの筋肉の動きが扇情的に感じられる。
(これは熟れている……)
間もなくシャワーの音がきこえ、いまその裸身に湯が弾け、滴っている体を想像した。肩から背に、胸の谷間を伝い、さらに尻の盛り上がりに流れている。そして繁みの毛先から雨だれのように落ちているにちがいない。