8-5
媚薬が効いている今の段階では、優子はまだこの状況に合意を示しているわけである。だからレイプは成立しない。
『デリシャス・フィア』のほんとうの恐怖はここからはじまるのだ。男は冷たく笑った。
「俺は今、左右それぞれの手に別のアイテムを持っている。どちらか一方を選ばせてやる」
視界を遮られた状況で選択を迫られる優子。
ザーメンの味がまだ舌に残っている。
「右……、やっぱり左……」
「いい選択だ。脚を開いて、こっちに見せるんだ」
男の指示通りに優子の脚がアルファベットのMのかたちに開く。
愛液が泡立って、恥毛を光らせている。
大陰唇はこんもりと左右に広がり、その内側に蛇の舌のように割れた小陰唇、真ん中で大げさに濡れる膣口、今にも震え出しそうなクリトリスは赤く腫れている。
男の左手に、優子の選択したものが握られている。
異物の気配がミリ単位で近づいてくるのが優子にもわかった。
もう間もなくだ。魔女の花が咲いて散る、その瞬間がくる。
そのとき、感情を持たない肌触りが優子の膣口を撫でた。
「きゃ、あ、ああっ……」
何も考えられない。ただ気持ち良かった。
その接点だけがとろけてしまいそうなほど熱くなって、ひくひくとうごめいた。
アナルとヴァギナが同時に収縮して、蜜を生みつづけている。
異物の先端部分が陰唇の上をすべり、さらにすべり、いつまで経っても中に入ってこようとはしない。
「入れて、おねがい……」
優子は泣く泣く催促の言葉を漏らした。
自分の体で許容できるかどうかもわからない。
それでも入れて欲しかった。
男のにやつく顔が目に浮かぶような気がした。
そして異物が侵入をはじめる。
くる、おおきいものがくる、すごくいい、からだが、ふるえる──。
膣がぎりぎりにまで広がって、さらに奥を突き抜け、粘膜の行き止まりにまで挿入される。
「はああああ……」
吐息の温度が唇を撫でていった。
自分の立場とは裏腹に、体の火照りはますます性欲を突き動かす。
胃がふくらむのとは違う感覚だった。子宮でもない。
膣が風船みたいに膨張する錯覚なのだ。
男が何かをつぶやいたが、優子には聞き取れなかった。