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嘘つきは恋の始まり 
【女性向け 官能小説】

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人の心まで覗き込むような顔しないで。

「意味は・・・ないよ。野口さん、いいマンションに住んでたから」
「うん」
「お給料いいんだったら・・・お酒、おごってくれるかな?って」

「・・・・・ふ〜ん。そっか。いいよ。お酒ぐらい」

「・・・・うん。ありがとう」

野口さんはそういう私のカウンターに置いてある手を握る。
触ったりなでたり。
器用に私の手を弄ぶ。

「やめてよ」
「手だけ・・・」

会社での失敗とか面白い話を明るく次々と話す野口さん。
これじゃモテるはずだよ。
そんな野口さんの話に桐生さんと会えない寂しさんかどこかへ行っちゃって
私もカウンターで笑い転げる。

でも。野口さんは私の手だけはずっと離さなかった。

まるでその手が野口さんの本心だとでも言うように。

「そろそろフルネームを教えてくれない?
お酒のお礼に・・・ね?」

「チコじゃダメなの?」
「ダメじゃないけどさ。好きな女のフルネームぐらい知りたいんだけど」
「好き?」
「好きだよ。おかしい?」

会社でモテモテじゃない・・・・
意味わからないんですけど。

何回か会って、その人をよく知って
それから人を好きになる私には、会って2回目で好きだという野口さんがよく分からない。
人ってそんなに簡単に人を好きになれるものなの?










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