見え隠れする想いT-1
葵たちから距離をおいて後をつける大和は、追いかけてきた九条や仙水、蒼牙と合流した。
「大和・・・その姿は・・・」
あっけにとられている仙水を前に、大和が硬直して頬を染めた。その隣で九条は口元に笑みを浮かべて呟く。
「貴様にそのような趣味があったとはな・・・」
「そんなわけないだろうっ!!」
ズカズカと足を踏み鳴らして葵を追いかけようとすると、遠目に葵がこちらを見ていることに気が付いた。九条や仙水の怒りにも似た気配が隠し切れず、葵に気が付いてしまったのだ。
(皆・・・来てしまったのね・・・)
「葵様?どうかいたしましたか?」
後ろを気にしている葵に気が付いた神楽は葵の顔を伺っている。
「あ・・・、神官たちが・・・」
「・・・これは皆さんお揃いで」
神楽と葵を取り囲んでいた偽の神官たちが彼らを守るように一歩前へと進み出た。
「神楽様、どうぞ陛下と先へお進みください。・・・ここは我々が」
「お前たち・・・」
神楽は眉間に皺をよせ、従者の背を見つめている。
「待ってください、神官たちには私から話します。彼らは私を心配して来てくれたのですから・・・」
まるで羽のように軽い身のこなしで馬からおりた葵は、近づいてきた大和に向き直り改まって頭を下げた。
「皆に心配をかけてしまってごめんなさい。勝手なことをしているとわかっています・・・ですが、もう少し時間をいただけませんか?」
「葵・・・」
大和が膝をついて葵の顔をのぞきこんだ。
「無事で良かった・・・何か理由があるのなら・・・」
葵が優しく声をかけてくる大和の瞳を見つめていると、何かが横を通り過ぎた。
次の瞬間、爆音とともに葵の背後で神楽のうめき声が聞こえ・・・振り返った葵の背を冷たい汗が流れた。
(う・・・そ・・・)
血まみれの神楽の脇にたたずんでいるのは漆黒の神官・・・九条だった。その手に握られている聖剣は神楽の血を滴らせ、赤黒く光っている。
「神楽さんっ!!」
悲鳴にも似た葵の声があたりにこだまする。
九条に斬り付けられた胸元の傷は深く、神楽の顔面は蒼白になってゆく・・・。