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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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見え隠れする想いU-1

駆け寄ろうとする葵の腕が何者かに掴まれ、阻まれた葵はその手を必死に振りほどこうとした。





「助ける必要はありません。彼はそれくらいの大罪を犯したのですから」






声の主は仙水だった。
あの優しい仙水がそんなことを口にするとは思いたくなかったが、そうさせてしまったのは自分なのだと葵にはわかっていた。






「・・・離してください仙水」






勢いよく腕を振りほどいた葵は、九条から神楽を守る様に彼を抱きしめた。






パアァ--と現れた真っ白な翼で彼を包み、優しく頬をなでると・・・ゆっくりと神楽が目を覚ました。





「・・・なぜそんな男を助ける」






背後で九条の低く怒りを含んだ声が響いた。






「・・・私も最初はそう思いました。でも彼は違う・・・何かを悔い、後悔した上で私に助けを求めているんです。やり方は間違ってしまったけれど・・・どうしても憎めないんです」






神楽を抱きしめて離そうとしない葵の傍らに蒼牙が視線を合わせてしゃがみこんだ。






「まーな、秀悠のおっさんも曄子っていうねぇちゃんも無事だったわけだし・・・この一件最後まで見守ってやってもいいんじゃねぇか?」






「蒼牙・・・よかった、あの二人は無事なんですね」






葵の気持ちを汲み取って味方になってくれる蒼牙の言葉は正直ありがたかった。九条や仙水は正直もう何をするかわからない。彼らに足止めされたら、王である葵にでさえどこまで太刀打ちできるかわからないのだ。






「私は反対です」






仙水のその言葉に眉を下げて目を閉じた葵は・・・





「・・・どうしても行かせてはくれませんか?」





「仙水、もう人質もいねぇんだし・・・なんかあっても葵ならすぐ逃げられるだろ」






やれやれといった様子の蒼牙はため息をついて立ちあがった。






それまで黙っていた九条も葵の手を引き、立ちあがらせようとする。






「ごめんなさい九条、仙水・・・この事が終わったら貴方たちのいう通りにします。ですから・・・今回は行かせてください」






九条の腕をすり抜けると、抱きしめた神楽へ葵が何か耳打ちしている。


小さく頷いた神楽が何かをつぶやくと・・・






葵の召喚した魔法陣が現れ、偽の神官たちと神楽、葵はそこへ飛び込んだ。






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