第三章-1
他の部屋のバルコニーからも、中庭の露天風呂からも、喘ぎ声が響き渡っていた。
そんな声を聞いているだけで、男の機能を持たない紗夜は、すぐにまた腰が揺れ始める。
が、また擦り付けようとしたガラスの柱は、あやめに取り外されてしまった。
「あやめさぁん…」
甘えるように声を掛けると、無情にもあやめは「そろそろ夕食のお時間ですので」と言い、さっと室内へと戻る。
不自然な内股でついて行くと、座卓の上に、いつの間にやら食事の用意がされていた。
「さあ、どうぞおすわりになって」
言われるがままに座ると、すぐそばにあやめが控える。あれこれと世話を焼かれながらの食事が始まった。
「お醤油をどうぞ」「熱いので冷まして差し上げますね」ぴったりと寄り添われながら食事をする。必然的に、あやめの胸が腕に擦れたり、逆に自分の胸にあやめの腕が触れたりする。その度に、ぴく、ぴくと紗夜は反応してしまう。
「ふふっ」
ふいに、笑い声がした。紗夜が顔を上げると、料理を運び込んできた仲居が「失礼しました」と、頭を下げる。
「ごめんなさいね、しつけがなってなくて」
あやめも一緒に謝罪したが、紗夜はその仲居の視線が気になり、「何に、笑ったのですか?」と尋ねた。
「あ、あの…お可愛らしくて…。先ほどはあんなに乱れてらしたのに、まるで嘘のように清楚で、なのにそんな些細なことで反応なさって…」
真っ赤になって答える仲居こそがかわいくて、紗夜は微笑んだ。あやめが説明を加える。
「あなたはこれまで拝見したことがなかったのね。女性型の身体をお持ちの方は、大変敏感でらっしゃるのよ」
「そう、なんですか…」
まじまじと見られ、今度は紗夜が顔を赤くする番だ。
「それに、性欲に限度がありません。あなたも、男の部分は一度達すればしばらく落ち着くでしょうが、女の部分はいくらでもかわいがっていただけるでしょう?」
「はい」
「紗夜様は、その女性の部分しかお持ちでないのですから」
「なるほど…」
感心したように見つめられ、紗夜は恥ずかしくなって俯いた。
「そうですわ」
あやめが思いついたように、声を上げる。仲居と紗夜が見返すと、あやめがにこにこと提案した。
「紗夜様、この子のお勉強のためにも、見せてやってくださいませ」
「ど、どこを、ですか…?」
「もちろん、こちらを、です」
「んくっ…」
ぐ、と浴衣越しに割れ目の辺りを掴まれ、紗夜はそれだけで腰を浮かせた。