Betula grossa〜出逢い〜-7
「なぁ..もしかして....少年はヤンキーだったの?」
俺の話しを聞いていた梓さんが口を開いた。
「えっ?違うよ!どうして?」
「いや..なんとなく....」
「あのね!純兄ちゃんはボクシングのジュニアチャンピオンだったんだよ!」
笑美ちゃんは嬉しそうな顔で言った。
「そうか....少年が笑美の事を守ってくれたんだな?」
「うん!そうだよ!」
「俺は何もしてない....先生が笑美をいじめから守ってくれたんだよ!」
「ううん!やっぱり純兄ちゃんのおかげだよ!」
笑美ちゃんはニコニコ笑っていた。
笑美ちゃんがいじめられている事を先生に報告した後しばらくは毎日のように笑美ちゃんと一緒に帰った。しかしそれは段々と減っていき二学期の終わりにはほとんどなくなっていた。その頃の笑美ちゃんは明るい笑顔を取り戻していた。
三学期に入ったある日、偶然帰りが一緒になった。
「あっ!純兄ちゃん!一緒に帰ってもいい?」
校門を出た所で笑美ちゃんに声をかけられた。
「うん!いいよ!」
それから笑美ちゃんはいろいろと話してくれた。もう心配ないと言ってくれた。最初は違和感があった「純兄ちゃん」という呼び方も当たり前のようになった。それからは逢えば挨拶をする程度で、卒業する時に感謝の手紙をもらった後は逢う事もなかった。それが今日久しぶりに笑美ちゃんと再会した。笑美ちゃんはあの頃と同じような笑顔を見せてくれていた。
「ねぇ純兄ちゃんはパソコン持ってる?」
「持ってるけど?」
「それネット出来るよね?」
「うん出来るけど?」
「じゃあそれ使わせてもらってもいい?」
「いいけど....」
「じゃあじゃあこれから行ってもいい?」
「別に構わないけど....」
「ありがとう!私準備してくるね!」
そう言って笑美ちゃんは席を立った。
「悪いな!うちのパソコンこの前壊れてしまって....まっ壊れてなくてもネットに繋いでなかったから出来なかったんだけどな!」
「えっ?」
俺は意外だった。パソコンが壊れてしまったのは仕方ないけど、ネットに繋いでなかったとは....
「前に住んでた所では就活とかで必要だったから繋いでたんだけど、こっちに来てからは携帯で間に合ったからな!元々あまり使ってなかったから」
「そうなんですか....」
俺がそう呟いた時
「純兄ちゃんお待たせ!」
笑美ちゃんが戻って来た。
「それじゃ行こうか!」
梓さんが立ち上がった。
俺と笑美ちゃんが梓さんの顔を見ていると
「何か問題でもあるのか?笑美を少年と二人きりにするのは心配だからな!」
梓さんはそう言って笑った。
「俺ってそんなに信用ないんですか?」
「ん?そんなわけじゃないけど....こんな可愛い子と一緒じゃ変な気にならないとも限らないからな!それとも笑美と二人きりじゃないと困る事でもあるのか?」
「そんなのあるわけないじゃないですか!」
「じゃあ行こうか!」
「ハイ....」
俺達は梓さんの部屋を出た。