Betula grossa〜出逢い〜-34
「はい....あぁ..紗弥香(さやか)か....どうした?....えっ?今?駅にいるけど?....うんいいよ!あっ!今香澄と一緒なんだけど....うんわかった!」
梓さんは携帯を切ってから
「香澄!紗弥香が会いたいって....どうする?」
「私も会いたいな!」
「今駅の近くに来ているから駅の北口で待っているって!」
「じゃあよろしく!」
香澄さんは俺に荷物を渡そうとした。
「えっ?」
驚く俺に
「梓の部屋に置いておいて!」
「えっ?なんで俺が?」
「笑美ちゃんに私の荷物を持たせるわけにはいかないだろ!それにこんな荷物を持ったままじゃな!」
「だったらコインロッカーに....」
「五月蝿いな!男だろ!細かい事を言うな!ついでに持って行ってくれてもいいだろ!」
口ではかなわないとわかった俺は仕方なく香澄さんの荷物を受け取った。
「じゃあ私のも頼む!」
梓さんも荷物を渡そうとした。
「えっ?」
「男だろ!」
「はいはい....」
梓さんの荷物も受け取って歩いていると
「お姉ちゃんの荷物は私が持つよ!」
笑美ちゃんが声をかけてくれたが
「大丈夫だよ!」
俺は笑美ちゃんの申し出を断った。出口まで歩いて来た時
「梓!」
手を振りながら女の人が走って来た。
「紗弥香!」
梓さんも手を上げていた。「急に旅行だなんてびっくりしたよ!」
「ゴメンね!急に香澄の実家に行く事になって....」
「私も誘ってくれれば良かったのに!」
「悪いな紗弥香!本当に急に決まったんだ!梓を誘ったのも帰省する直前に偶然逢ったからなんだ!」
「そうだったの.....」
女の人が俺の方を見た時
「純君?」
そう俺に話しかけてきた。
「えっ?」
女の人を見ると見覚えのある顔だった。
「お姉さん?」
「うん!覚えてくれてたんだ!」
その時
「お姉ちゃん!勝手に走りださないでよ!」
少女が走って来た。
「茉莉菜(まりな)?」
その少女の顔を見て俺は思わず呟いた。
「純君..亜梨紗(ありさ)よ!茉莉菜から聞いてなかった?それに茉莉菜はもう....」
紗弥香さんは少し暗い顔になった....
「そうでしたね....久しぶりだね?元気だった亜梨紗?」
亜梨紗は俺の顔を見て
「あっ!」
驚いたような顔をして
「先に帰るね!」
紗弥香さんに声をかけて帰って行った。
「ゴメンね!あの子は今進路の事でピリピリしているから....気にしないでね!」
「いえ....俺は別に....」
俺は亜梨紗の後ろ姿を見つめていた。
「少年!あの子とどういう関係なのかな?」
梓さんが興味深そうな顔で聞いてきた。
「詳しく聞かせてもらおうか!」
香澄さんは俺を引きずるように歩き始めた。笑美ちゃんや姫川さんまでも一緒について来た。
夕食も兼ねて俺はファミレスに連れ込まれた。
「さあ素直に白状しろ!あの子とどういう関係なんだ?」
「こっちには証人もいるんだから嘘はバレるぞ!」
梓さんと香澄さんの取り調べが始まった。
「梓さん達が喜ぶような話はありませんよ....紗弥香さんの妹で、亜梨紗の双子の妹の茉莉菜とつき合っていたんです....」
「茉莉菜ちゃんって確か....」
梓さんは紗弥香さんの顔を見た。紗弥香さんは一度頷くと
「うん....一昨年の秋に....」
紗弥香さんの顔が曇った。