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Betula grossa〜出逢い〜
【ラブコメ 官能小説】

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Betula grossa〜出逢い〜-35

「お前..亜梨紗ちゃんに何かしたのか?」
香澄さんが俺の顔を睨みつけて言った。
「何もしてませんよ!二人だけで逢った事もないんですから!」
「だったら何でお前の顔を見たとたんに顔色が変わるんだよ!」
香澄さんが続けた。
「知りませんよ!彼女に聞いて下さい!」
香澄さんが何か言おうとすると
「香澄!純君の言う通りよ!あの頃は私も亜梨紗も茉莉菜の恋を応援していた....だから茉莉菜を裏切るような事は純君もしていないと思う....茉莉菜の態度が変わったという事はなかったから....亜梨紗が変だったのは..昨日..両親と進路の事でケンカしたからイライラしてたんだと思うわ!」
「そう....」
香澄さんは少しガッカリしたように呟いた。
「ところで純君?どっちが本命なの?」
「えっ?」
紗弥香さんは笑いながら
「こっちの可愛い子とこちらの綺麗な子....どっちが本命?」
「それ私も聞きたい!」
「そうだ!教えろ!どっちが本命なんだ?」
梓さんと香澄さんが乗って来た。
「そんな事言われても....親しくなったばかりだし....」
「それじゃあ....どちらの子がタイプなの?あなた達も気になるでしょ?」
紗弥香さんが笑美ちゃんと姫川さんを見ると
「私達は別に....ねぇ笑美ちゃん?」
「うん....」
二人共俯いて真っ赤になっていた。
「もう....いい加減にして下さい!俺帰ります!」
席を立って帰ろうとすると
「待て!忘れ物だ!」
梓さんが荷物を指差した。
「少年は笑美ちゃんに全部持たせるような薄情者なのか?」
香澄さんが荷物を俺に手渡した。何か言い返そうかと思ったが諦めて荷物を持って店を出た。笑美ちゃんと姫川さんも俺の後を追うように店から出て来た。
「純兄ちゃん!待って!」
俺は二人を待って一緒に歩き始めた。
「ゴメンね!純兄ちゃん!お姉ちゃんたら変な事言って....純兄ちゃんには茉莉菜さんっていう彼女がいるのに....」
「あれ?俺....つき合っていたって過去形で言わなかったっけ?」
「えっ?」
「茉莉菜はもういないんだ....一昨年病気で....」
「ゴメンなさい....私....」
「気にしなくてもいいよ!昔の話しだから....」
その後無言が続いた。途中で姫川さんと別れ、荷物を届けてから、自分の部屋に戻ってベッドの上に寝転んだ。

茉莉菜....美浦(みうら)茉莉菜は俺がつき合っていた女の子....そして俺の初めての人....それは二人だけの秘密....いや....俺だけの秘密....
茉莉菜と出逢ったのは、俺が事故に遭って入院している時だった。ケガはたいした事なかったが、神経を傷めていたために足が思うように動かなかったのでリハビリをしている時だった。毎日のように俺のリハビリの様子を見ている女の子に気づき声をかけた。
「どうしたの?俺何か珍しい事やってる?」
笑顔で話しかけたつもりだったが、女の子は驚いたような顔をして慌てて逃げるように去って行った。
(怒っているように聞こえたのかな....)
俺は少し反省した。その時は退屈しのぎに話し相手が欲しかっただけなのだが、次の日も、その次の日も来ているので気になって再び声をかけた。
「良かったら少し話してくれない?」
「えっ?」
少女は少し驚いたような顔をした。
「ダメ?」
少女は少し考えて
「少しならいいよ!」
そう答えてくれた。
「ちょっと待っててね!そっちに行くから!」
俺は車椅子に乗って廊下に出ると
「押してあげるね!」
少女は車椅子を押してくれた。俺達は移動しながら話しをした....お互いの学校の事友達の事....しかし何故病院にいるのかは話さなかった。お互いに話したくなかったのだろう....だから話しもしなかったし聞きもしなかった。お互いの名前さえ聞かなかった。それは、ただの暇つぶしだと思っていたから....それからはリハビリの後で少女を見かける度に話しかけた。少女もまた笑顔で答えてくれた。そんな日が一週間程続いたが、急に少女の顔を見なくなった。俺は少女が病院に来なくても良くなったのか....と少し残念な気もしたが少女にとってはそのほうがいいに決まっているので良かったと思う事にした。


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