Betula grossa〜出逢い〜-28
「お疲れ様!一息ついて食事にしましょう!」
明美さんが声をかけると
「おっ!ありがとう!葛城君!朝食にしよう!」
昂さんが葛城君に声をかけた。
「はい!」
私達がストーブの近くに朝食を並べていると
「ちょっと多くないか?」
昂さんの言葉に
「私達の分も入っているのよ!それとも私達と一緒はイヤ?」
明美さんがイヤミを込めて言うと
「とんでもない!大歓迎だよ!なっ!葛城君!」
慌てて答える昂さんに
「そうですね!」
葛城君は笑いながら答えていた。
「ねえねえ!純兄ちゃん!これ私達も作ったんだよ!」
「へぇ....笑美ちゃんは何を作ったの?」
「私はコレとコレ....そして美菜お姉ちゃんが....」
笑美ちゃんは指差して教えてくれた。それを見ていた昂さんが
「お前は何を作ったんだ?」
明美さんに聞いた。
「私はおにぎりを....何か文句ある?」
明美さんが睨みつけると
「いえ....何も....」
昂さんは小声で呟いておにぎりを口にした。
「葛城君大丈夫?寝てないんじゃない?」
私は気になる事を聞いた。
「えっ!どうして....」
「昨日....寝る前にトイレに行ったらここの灯りがついていて....気になって覗いたら葛城君が....」
「見てたの?」
葛城君が照れくさそうに笑った。
「そうだったの?私..全く気づかなかったよ....」
「別に笑美ちゃんは気にしなくてもいいんだよ!俺が勝手にやっていたんだから....ただ寝てられなかっただけだから....」
「葛城君は責任感があるんだな....それに比べ俺は....」
「気にしないで下さい....昂さんにそんな事言われると....」
葛城君は照れくさそうに笑った。
「葛城君はスジがいいというかカンがいいというか....私も小さい頃に何回も見て来たけど昨日が初めてなんて思えないよ!」
明美さんが興奮したように言うと
「俺なんかまだまだです....期待なんかしないで欲しいんですが....さっきもおじいさんが顔を出していかれて....」
「葛城君は気にしなくてもいいんだよ!じい様達は神楽をやる事になったのが嬉しいんだから!娯楽の少ない田舎の村だからな!それより食べて!美味いぞ!」
昂さんに勧められて葛城君が出汁巻きに手を伸ばした。
「本当だ!美味いですね!」
「純兄ちゃん!それ美菜お姉ちゃんが作ったんだよ!」
笑美ちゃんが言うと
「姫川さん料理が上手なんだね!」
「そんな事....普通です....」
私は照れくさくって下を向いた。
「ねえねえ純兄ちゃん!こっちも食べて!私が作ったんだよ!」
葛城君は笑美ちゃんに言われるままに口にして
「美味いよ!笑美ちゃん!」
「本当?純兄ちゃん?」
「うん!笑美ちゃんも料理が上手だね!」
「エヘヘ....ありがとう純兄ちゃん!」
笑美ちゃんは嬉しそうに笑った。
「美菜ちゃんと笑美ちゃんが手伝ってくれるから期待してね!」
明美さんが言うと
「それは楽しみだな!なっ!葛城君!」
昂さんが葛城君の背中を叩くと
「それですね!」
葛城君も笑った。