Betula grossa〜出逢い〜-17
梓さんに再会したのは、私が車椅子を離れ松葉杖で歩いている頃だった。たまたま入ったコンビニで梓さんはバイトしていた。
「あれっ!車椅子を卒業出来たんだね!おめでとう!」
レジでいきなり話しかけられた。
「えっ?」
私が不思議そうな顔をしていると
「そっかぁ忘れちゃったよね!前に逢った事があるんだけど....」
「あっ!」
「思い出してくれた?」
梓さんは微笑んでくれた。
「はい!」
「良かった!」
「あの!どうして....」
私の言葉を遮るように
「この後少し時間ある?」
そう聞いてきた。
「はい....」
「私これであがりだから少し待ってて!」
梓さんは私の返事も聞かずに奥に入って行った。
「お待たせ!行こう」
雑誌を立ち読みしていた私は梓さんと近くのカフェに入った。
「誘っておいてアレだけど....私と一緒で良かったの?」
「えっ?」
「だって....私達そんなに話しをしたわけでもないのに....悪い癖なんだよね....少しでも話しすると友達になったつもりで話しかけてしまって....大丈夫だった?」
「はい!」
言われみればそうだった。しかし梓さんとはそんな感じはしなかった。私は友達が少なくクラスでも一人でいる事が多かったので、気軽に話しかけられたのが嬉しかった。
「なんだか不思議ですね!前からの友達みたいな気がします。名前も知らないのに....」
「そういえばそうだね!私は城崎梓....」
「私は姫川美菜です!」
私達が話していると父から電話があり、私がいる場所を告げると父がやって来た。
「美菜ここにいたのか捜したぞ!」
「ごめんなさい!城崎さんにお逢いしたので....」
「城崎さん?」
父は梓さんの顔を見て
「確かあなたは..以前娘を助けていただいた....」
「えっ!覚えていらっしゃるんですか?」
「ええ..人の顔を覚えるのも私の仕事ですから!今日はお仕事..休みなんですか?」
「いえ....事情がありまして....会社を辞めたんです....」
「えっ?どうしてですか?」「お父様!」
私は慌てて父を止めた。
「そうですね!すみません!城崎さんには城崎さんの事情がおありなんですよね....」
父は頭を下げた後、私の隣に座った。
「城崎さんは今....」
「コンビニでバイトしてます。」
「もしよろしければウチの会社を受けてみませんか?実は今社員を募集してまして....私には人事の権限がないので、必ず採用するとは申し上げられませんが、受けてみればいかがでしょうか?」
梓さんは父の言葉を受けて、父の会社を受けて採用された。採用された後で梓さんに逢った時
「お嬢様!」
などと話しかけてくるものだから照れてしまい
「やめて下さい!私はただの高校生ですから、私に敬語は使わないで下さい!」
そう言うと
「じゃあ私の事も名前で呼んで!」
そう言われたので
「梓さん!」
と呼ぶようになった。それ以来親しくしてもらっている。