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Betula grossa〜出逢い〜
【ラブコメ 官能小説】

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Betula grossa〜出逢い〜-16

葛城君が着替えている間に私達はメイクを直してもらった。それとメイクのアドバイスも受けた。それは私にも出来そうで参考になった。香澄さんのような友人がいるのを見ると改めて梓さんは大人だと思った。そんな梓さんと知り合ったのは私が高校一年生の時だった。当時、入学前のケガにより車椅子に乗っていた私は、父の会社に用事があって行った時、会社の近くの歩道の段差を車椅子で上がれずに困っていた。そんな私を父の会社に商談に行く途中の梓さんが助けてくれた。
「他人に甘えないで、自分で出来る事は自分でする。それは当たり前の事だと思うけど....ムリしないで助けを求める事も必要だよ!」
梓さんは笑顔で車椅子を上げてくれた。
「ありがとうございます!」
私が頭を下げると
「別にお礼を言われる事をしたわけじゃないからいいよ!」
そう言いながら私の横を歩いてくれた。私が社長の娘だと知ると、梓さんと一緒に商談に来ていた男性が慌てて私の車椅子を押し始めて梓さんに文句を言っていたが、梓さんは変わらずに私の横を歩いていた。
次の日も父と一緒に会社に入って行くと偶然梓さんに逢った。
「昨日はありがとうございました!」
「そんな改まらなくてもいいよ!」
私達が話していると
「お時間はありますか?よろしければ一緒に来ていただけませんか?」
父が梓さんに話しかけた。
「はい!わかりました!」
梓さんがそう答えたので、私は車椅子を父に押されて社長室へと向かった。
「楽にして下さい!」
父がそう話しかけたが、梓さんは恐縮しているみたいだった。
「ねぇねぇ私何かやらかしたのかなぁ?」
父が席を外した時に私に話しかけて来たが
「さあ....」
私にも父の考えがわからなかった。
「すみません!お待たせしました!」
父が戻って来て梓さんの前に座った。
「こちらに来てもらったのは商談とは関係ありませんので楽にして下さい!」
「はい....」
父にそう言われても簡単に楽な態度はとれないだろう。
「昨日、たまたま見ていたのですが、どうして娘の車椅子を押さなかったのですか?」
「申し訳ありません!」
「いえ!責めているわけではないんです!ただ困っている娘にいち早く手を差し伸べてくれたあなたがどうしてかな?と思いまして....」
「それは娘さんが強い人..そう感じたからです。娘さんに話しかけた時、自分の事は自分で出来るのに手を出さないで!そう思っているように感じたからです!私もそうでしたから....」
「それはどういう事ですか?」
「私は中学生の時、陸上をやっていたんです。陸上の強い高校から推薦の話しがでるくらいの....といっても関東大会止まりで、全国的には無名の選手だったんですけど....そんな時、階段から落ちてケガしてしまって....推薦の話しもなくなって....周りはいろいろ気を使ってくれて....それが少し鬱陶しく感じた事もありましたから....」
「私達が甘やかしていると....」
「いえ!そういうわけではありません!あの時は気づきませんでしたが娘の事を心配する親の気持ちは少し理解しているつもりです。だから私一人ぐらい別にいいかなぁって....」
(違う!そうじゃない!私は車椅子で歩道に上がれなかった事に苛立っていただけ!私はそんなに強くない!)
父と梓さんの会話を聞いていて私はそう感じていた。
それからしばらく雑談をして梓さんは帰って行った。
その後、梓さんは担当が変わったのか父の会社に来なくなった。


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