里美 第7話-1
三つ巴
あの朝、里美が爆睡できたのとは反対に、太一はきっと眠れなかったのだろう。
朝食を作っていると、太一は真っ赤な目をして起きてきた。
「おい、大丈夫か?目が真っ赤だぞ」
太一を見て、夫が朝の挨拶より先に心配して声をかけた。
「はい、大丈夫です。人んちに泊ったの始めてで…なんか緊張しちゃって」
太一が真っ赤な顔で、頭をかきながら言った。
それから朝食を一緒に食べて、会社へ行くついでだからと、夫は遠慮している太一を乗せて出て行った。
その太一が助手席から、未練たらしく里美をチラチラと見て、まるで助けを乞うているみたいで、里美は吹き出しそうだった。
(たいちゃん、居たかったんだろなぁ。遠慮してたんじゃないのにね)
里美は、玄関を出て行く太一の事を思い出して笑った。
それから半月くらい過ぎて、太一との接点もなく、またいつも通りの退屈な日が過ぎていた。
そんなある日、久しぶりに義父が家にやってきた。
「お義父さん、どうしてたんですか?なんかすごい久しぶりな気が。。。」
里美はいつもと変わらない感じで、義父に応対した。
「いや、近頃はなんだかんだと忙しくてな」
義父は里美の態度が変わらない事に安心したのか、笑顔でそう答えた。
「今、お茶を入れますから、どうぞ。」
里美の誘いに、うれしそうに上がってきた。
「こりゃ、むしりがいが有るなぁ。。。」
庭の草を見て、義父はそう言って笑った。
「ついつい、お義父さんに甘えちゃって。ごめんなさい」
里美が甘えた声で、そう言うと義父は嬉しそうに笑った。
「さて、お茶も貰った事だし、草むしりするかな」
義父はそういうと、いそいそと庭へ出て行った。
「暑いから、無理しないでくださいね。お義父さん」
里美はそう言うと、洗濯物を取りに脱衣所へ向かった。
「ふぅぅ〜、暑い暑い」
小一時間ほど草むしりしていた、義父がベランダの淵に腰掛けて汗を拭いていた。
「お義父さん、お風呂使います?さっぱりしますよ」
「いや、まだ終ってないからな」
「まだ日差しが暑いから、一気にやったら体こわしますよ。お義母さんに怒られちゃう」
里美は、冗談めかして笑いながら言った。
「そうだな、じゃぁ今日はこの辺でやめといて、また寄らしてもらおうかな」
義父はそういうと、美味しそうに冷たいお茶をごくごくと飲んだ。
「お風呂の準備しましょうか?」
「いや、ありがたいけど、家に帰ってシャワー浴びるからいいよ」
義父は、里美の言葉に嬉しそうに言った。
「遠慮なさらなくてもいいのに…」
そう言う里美に義父は笑いながら、また来るよと言うと帰っていった。