『清子と、赤い糸』-34
ぐっちょ、ぐっちょ、ぐっちょ、ぐちょぐちょぐちょ……!
「や、やらしい音が、止まらんよっ、こ、腰も、もう、ウチ、とまらんよぉおぉっっ!」
「………」
「や、あっ、ボ、ボイン、揉んだら、あかんっ、ウ、ウチ、あかんくなるっ!」
清子に制されているので、腰は動かせないが、腕は動かせるとばかりに、岡崎が両手で乳房を鷲掴みにしてきた。
「あ、あかんっ、まーちゃん、もんだら、あ、あかんっ……!」
はっ、はっ、と、まるで発情しきった雌犬のように、清子は口をだらしなく開いて、唾液を垂らしながら、呼吸を乱していた。
「あ、ああぁあぁぁ……あっ、あぁっ、ああぁっ……!」
清子の声音に、重い低音が混ざる。それは、彼女が絶頂を間近に見ていることを声で示す、反応である。
「清子、イクのか?」
「あ、う、うぁぅっ、あ、あぁっ、ウ、ウチ……ウチ……っ……!」
「イクんだろ? イクんだよな?」
「あぅっ、あ、ああぅっ、あ、ウ、ウチ、イ、イクッ……!」
初めて、“しぬ”ではなく“イク”と、清子の口から零れ出た。習慣化したところはあったのだろうが、“イク”と言う言葉に対する気恥ずかしさも、清子は持っていたのだ。
「あ、ああっ、まーちゃん、ウチ、イクッ、イクッ、イってまうよぉおぉぉっ!!」
それを忘れるくらい、今の清子は“おうまさんごっこ”によるセックスに、夢中になっていた。
「清子、俺も、また出そうだ。だから……」
岡崎が乳房を揉む動きに、更なる激しさと淫靡さを加えてきた。体の中で“エクスタシー”を弾けさせようとしている清子に、最後の刺激を与えようとしているのだ。
「あぁんっ、あっ、やっ、ああっ!!」
「存分に……清子……イッて、くれっ……!」
「あぅっ、あっ、あっ、イ、イクッ、イクッ、ウチ、イクッ、イクううぅううぅぅぅううぅぅぅッッッ!!」
清子の身体が激しく硬直しながら反りあがり、岡崎の“大樹”を捉まえて話さない胎内の襞の全てが、淫猥な痙攣を起こした。
「く、うあぁっ!」
それを受けて、岡崎もまた、隆起してきた生命の溶岩を、そのまま清子の中に向けて爆発させた。
「あふぅっ、あっ、い、いっぱい、きとるっ……! まーちゃんの、あついの、いっぱい、ウチの中に、またきとるううぅぅうぅぅっ!!」
その爆発を胎内に浴びて、清子はまたしても激しい痙攣をその身に起こした。大規模な爆発を起こす可能性のある火山を“スーパー・ボルケイノ”と呼ぶが、清子の中で弾けたのはまさに、絶頂の中の絶頂・“スーパー・エクスタシー”であった。
「あはッ、ハッ、はぁっ、はァっ、はぁ、はぁ……!」
四肢に何度も、強張りと緩みを繰り返し、清子は、律することの出来ない荒い呼吸を続けていた。
「う、うぅ……く……」
「あ、はぁ……まーちゃんの、まだ、でとる、よぉ……」
何発も既に放出しながら、岡崎は止むことなく、清子の中に射精を続けてきた。
「はふぅ……」
やがて、完全に体の全てが弛緩した清子は、繋がったままの状態で、まるで操り人形の繰り糸が切れたように、岡崎の身体に覆いかぶさってきた。
「あは……腰に、力、はいらンようになってもうた……」
「清子は“上”になると、いつもそれぐらい、乱れるからな」
「もう……そんなん、いわんといて……ん……」
“おしおきや”と、岡崎の唇を清子は深く塞いだ。
…第三者的には、それはまったく“おしおき”ではありません。“ご褒美”にしか見えません。
(ご褒美に、決まっとるやん……)
…ごちそうさまでした。
「ふふ……んー……」
清子は、何度も何度でも、岡崎の唇にキスを重ねた。
「ん……はふ……ん……セックスの後の、チューって、ウチ、大好きやねん……」
脳内が性の交わりを終えたばかりの酩酊状態になると、唇の感度が凄まじく上がる。そのうえ、甘い味もするので、清子はその虜になっていた。
「ん……ちゅ……ん、んちゅ……」
「清子……ん……」
「んはぁ、ま、まーちゃん……ん、ちゅ……」
“キス魔”と化したのは、清子だけではない。それを受け止めながら、しかし、主導権を握らんばかりに応酬してくる岡崎もまた、唇同士の接合がメインの“後戯”を愉しみにしていた。
「ぷはぁ……まーちゃん……好きやで……大好きや……」
深く舌ごと絡みあっていた唇を離しても、幾重もの銀糸の軌跡が、まるで“運命の赤い糸”のように、二人を繋ぎ続ける。一度は切り離れてしまったように思えたその糸は、時も距離も超えて、結びついていたのだ。
「清子……愛している……」
「! ……ウチかて、愛しとるよ……まーちゃん………」
言葉によっても、さらに深い繋がりを、二人は約束のように交わしていた…。