『清子と、赤い糸』-32
生殖器同士の擦りあいという、“擬似セックス”を果たした二人は、当然ながら毎夜毎夜、“お肌の触れ合い”をすることに遠慮がなくなった。
「あ、あぅっ、あ、ああっ……！」
擦りあいをしながら、なんとか挿入を果たそうと、少しずつ深いところまで岡崎の“樹”を迎え入れようとする清子。
『ウチも、きちんと入ったの、３回目ぐらいやったかなぁ』
おませな美依子でさえも、“破瓜”を果たしたのは回数を経てからだったのだから、焦りがないと言えば嘘になるが、ゆっくりとそれを達成させればいいという気持ちにもなっていた。
「どうだ、清子、だいじょうぶか……？」
「う、うん……もうちょっと、入れてみてんか……」
「わかった」
本当は、少しでも早く中に入りたいであろう岡崎が、労わりの気持ちをずっと示してくれているので、清子は心に余裕を持つことが出来た。
「くっ、い、いたい……」
「そ、そうか」
「や、で、でも、まだ、だいじょうぶや……もっと、入れてええよ……く……」
「清子……」
岡崎の先端が、丸ごと清子の凹みに入り込んでいる。もっとも径のある部分さえ通ってしまえば、清子の中に全てを収めることが出来る。
「きてや、まーちゃん、ウチ、だいじょうぶやから、きて……！」
「清子っ……」
ぐ、と、岡崎の圧力が強まった、その瞬間であった。
ぷつっ……ずにゅり……
「！！」
何かが股間ではじけて、激しく峻烈な痛みを発したが、そのすぐ後で、質量のある熱い感触が、胎内でいっぱいになった。
「う、わ、な、なんか、入ってきたっ……！」
泡を食ったように、清子が、不可思議な体の感覚に戸惑いの表情を浮かべている。
「は、入ったん、かな。まーちゃんの、チ×コ、入ったんと、ちがう？」
「ああ、その、とおりだ……」
興奮気味の清子に比べて、岡崎は至極、冷静であった。冷静さを装わなければ、すぐに出てしまいそうになっているからであろう。
「お股、じんじんするけど……中は、すごい、ほんわかしとる……」
「微妙に、動いているんだな……」
「そ、そうなん？ あんまり、意識しとるわけやないけど……」
呼吸の度に、鼓動の度に、清子の胎内は岡崎を包んだまま、微弱な動きを繰り返して、興奮で張り詰めた岡崎の“樹”を刺激していた。
「うっ」
「！？」
生まれて初めて味わう、女性の感触に慣れない身体が、込み上げてきた欲望の漏出を、そのまま押し留めるのは不可能であった。
どびゅるっ、びゅるびゅるびゅるっ……」
「な、なんかきたっ、なんか、ウチの中に、あふれてきよった！」
「………」
「せ、精子やな？ まーちゃん、ウチの中に、精子だしたんやな？」
「あ、ああ……」
挿入するなり、身動きひとつすることなく、射精をしてしまったからか、岡崎は非常に消沈した様子である。
「す、すごいで……ウチの中、すごい、ぽかぽかしとる……精子って、あったかいんやなぁ……」
しかし、それを責めるようなことは何もせず、清子はひたすら、胎内で受けた射精の感覚を、珍しげに受け止めていた。
「なあ、まーちゃん、今夜はずっと、このままで、ええか……？」
暖かな感触を、愉しんでいたかった。まだ、“入口”には引きつるような痛みがあるので、清子は余計に、そうありたかった。
「痛くないか？」
「動かんとけば、平気や」
「なら、今夜はずっと、こうしていよう」
「ふふ……まーちゃん、ありがとな……」
自分のことを、こうやって一番に考えてくれる、岡崎との接触の心地よさを、いつまでも感じていたかった。
「まーちゃん、好きやで……」
「清子……俺も、好きだ……」
唇が何度も触れ合い、体をゆるやかに抱き締めあって、本当の意味で“初めてのセックス”を完遂させた二人は、満ち足りたような“夢心地”のまま、幸せな時間の中に心を漂わせていた…。 ……』