少しずつ-9
「どうしたの?」
「この前合コンで会った人と付き合うことになったのー」
コータはいいの?
きょとんとする私に、加奈子が続ける。
「コータとは相変わらずなんだけど、違うみたい。何か。てい
うか、私結構ずるいことしてたから、しょうがないのかも。」
さっぱり分かりません。
「前に、コータの話したでしょ。あれ、ゆかりをけん制しよう
かと思ってあえて話したの。」
へ?
「コータ、酔いがまわるとゆかりのことばっか聞いてくるんだ
よ。そばに私もいるのに。あいつに彼氏はいるのか、趣味は何
だ、食べ物の好き嫌いまで」
知らない…、そんな話知らない。
でも、チーズケーキが好きなこと知ってたみたい。思い返せば
。
「あいつたぶん見た目よりオクテだと思う。本命の子には。ゆ
かり、コータはいいヤツだよ。だから、ちゃんと見てあげて、
って私が言える筋合いじゃないけど。」
そんな…。
加奈子、私だってずるいんだよ。私のほうが自分の気持ちを出
せない分もっとずるい。
「加奈子はいい子だし、大好きだよ。話してくれてありがとう
」
ごめん、これしか言えなくて。
今は、まだ何も言えない。意気地なしで、ごめん。
コータ、ちょっと期待してもいいの?
8.
話をいろいろ聞かされても、コータは私に対して態度を変える
ことはなく。
私も態度を変えることができず。
でも、前よりコータと話すと目を見てしまう。
からかうし、無神経なのかと思えば、すごく気遣いもあるし。
コータの目を見てると、深いところに吸い込まれそうな気がす
る。
私の気持ちなんてはじめからお見通しのようで、でも、何も考
えてなさそうで。
コータ、私に勇気をください。
9.
家に帰ってのんびりしていると、また着信が。
着信のほかにメールも来てる。
あ、コータ。
「今どこ?」
簡潔なメールだな、相変わらず。
ちょっとにんまりしてしまう。