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少しずつ
【青春 恋愛小説】

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少しずつ-8

5.
「コータ、ごめんね。この前」

「お前、せっかくサークルで花火見ようって話があったのに一
人バックレただろ」

「うん。ごめん。」

「男?」

は?まだいうか。私は、私は…

「違うよ、学部の友達と一緒だった。この前飲んだ子達だよ?


ふーん、だって。なんだよ。
今、試合が終わって帰りの移動中。私はコータの車に二人きり
だった。
ちょっと嬉しい。コータと二人きり。
少しだけ恋人っぽいよね。この時間がずっと続けばいいのに。

「寄り道しようぜ」

うん!
途中で喫茶店に入る。
おいしいチーズケーキに舌鼓。あぁ、幸せ。

「なぁ、中川」

「あのさ…」

いつになく、慎重な話し方。

「ん?なに?」

もごもごしながら返事をする。

「やっぱいい。お前はチーズケーキが大好きだな」

「うん!大好きだよー」


なんだったんだろう。


6.
今日はのんびり家でお夕飯。
料理って慣れかも。少しずつ包丁の動きが早くなっている気が
する。
そろそろお風呂入って寝ようかな。
あれ、携帯が点滅してる。
コータだ!

「もしもし?電話くれた?」

「こんばんはー」

誰?

「俺、コータの友達なんですけど、コータ最近弱気で。なんか
励ましてあげてくれませんか?」

なんのこっちゃ。これもマネージャーの仕事か。

「はいはーい。コータ、男は元気が一番よ。そういえば最近ら
しくなかった気がするよ、とお伝えください」

コータ、何があったのか知らないけど、元気出してね。


7.
「ゆかり」

加奈子が遠くから聞こえる。
彼女とキャンパスで会うのは珍しい。

「ゆかり、聞いてよ」

コータの話を聞いてから、加奈子とは当たり障りないバカ話し
かしていない。
ちょっとだけ、緊張。


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