少しずつ-7
でも、いい雰囲気というよりは絡まれてるだけ、の気がするのよねー。
会話の内容はだいたいマネージャーのあの子がかわいいだの、
私の友達に彼氏はいるのかだの、そんな話ばかり。
私のこと、どう思っているの?
ところで、今日は花火大会。
コータは誰かと行くのかな。
私は友達の家で見ることになっていた。だって、コータから誘
われないんだもん。
練習が終わり、みんな今日の花火の話で盛り上がっている。
コータの声が聞こえる。
「今日、暇な一年生は花火を見に行くことー」
え?
「でも、俺はナンパに精を出すので、あんまりみんなと一緒に
いられません」
笑いが起こる。
なんだよ、一瞬だけ友達との約束断ってしまおうかと思ったよ
。
女友達は恋愛に対して協力的だからね。
でも、ナンパしているところなんて見たくないの。ほかの女の
子と仲良く話すところなんて見たくないの。
帰ろう。
会釈だけして、そっとグラウンドを出る。
コータと私、距離はさっぱり縮まらないね。
もうあきらめたほうがいいのかな。
「きれいー」
ドーン、ドーンと遠くで深い音がする。
「ゆかり、今日コータ君はどうしたの?」
飲み会以来、友達はコータのことをよく話題にする。
ちゃんとコータに対する気持ちを話したことはないけど、たぶ
ん友達は分かっている。
だから、話題にはするけど、必要以上にからかったりはしない
。だから、変に気持ちが暴走することなくやっていられるのだ
と思う。本当にいいヤツら。
「コータはナンパに行くって」
「コータ君て、もしかしたらかわいい人なのかもねー」
そうかもー、と同意の声。え?何?
「ゆかりもそのうち分かるよ」
なんだろ。
「おいしいお酒に、きれいな花火と、楽しい女友達。最高でし
ょ?」
そうだね。コータのことは忘れて飲もう。
ドーン、ドーン
花火の音で全然気づかなかった。携帯にコータから着信があっ
たことに。