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あいかわらずなボクら
【青春 恋愛小説】

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VS欲望-13

いつものぶりっこな上目遣いの笑顔じゃなく、涙でグシャグシャに歪んだ不格好な彼女の笑顔は、今まで見てきた中で一番綺麗な笑顔だった。


しばし、見とれるように呆けてた俺は、慌てて“俺も好きだった”と言おうした。


なのに、なぜか言葉が出てこない。


最後くらい優しい言葉かけてやれよ。


どこまで気が利かねえんだよ。


言葉に詰まる俺を見ていた郁美は、ガタッと椅子から立ち上がると、小さな声で“バーカ”とだけ言って悪戯っぽく笑ってからくるりと俺に背を向けた。


彼女はそのまま一度も振り返ることなく人混みの中に消えて言った。


ポツンと残された郁美の飲み残したアイスティーのグラスから、カランと氷が溶け落ちた。


郁美とは終わってしまったんだ。


さっきまでのやり取りが現実だったんだと思うと、手が震えて来て視界がグニャリと歪んだ。


咄嗟に右手で自分の頭を支え目をキツく閉じた。


しばらくそうしてから薄く目を開けると、隣のテーブルの主婦と目が合った。


向こうは慌てて目を逸らしたが、よく見ると周囲の席の人達もチラチラ俺を見ていた。


いつまでも牛丼食べずに俯いてりゃ怪しいよな。


震える手で箸を掴み、無理矢理口の中に押し込む。


さっきまであんなに腹が減ってたのに、まるで飲み込めない。 

 
今日の牛丼はしょっぱ過ぎんだな。


何度もむせながらかきこむように食べ終えると、今度はそれが逆流してきそうなほどの胸のムカつきに襲われた。


吐き気に涙がジワリと滲んだ。


俺は胸がムカついて苦しくなり、組んだ両手を額に当ててテーブルに肘をついた。


多分胸やけで苦しいから動けないんだ。ただ、それだけだ。


俺は一人でそう納得すると、次々とテーブルの上に落ちる涙を肘で乱暴に拭った。


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