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あいかわらずなボクら
【青春 恋愛小説】

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VS欲望-14

 


  ◇  ◇  ◇



そんなことを思い出していた俺は、よっぽど険しい顔をしていたらしく、石澤母が心配そうにこちらを見ていた。


自分のしてきた行動に、再び反吐が出そうになる。


郁美と誠心誠意付き合うって言っておきながら全然大事にしてなかったじゃねえか。


俺はYシャツの裾をグッと握りしめた。


こみ上げてくる唾がやたら酸っぱく感じた。


こんな軽率な行動をとっていて、郁美をもし妊娠させていたらなんて思うと、自分のしてきたことの重大さに鳥肌が立った。


一歩間違えてたら、郁美を石澤母の親友と同じような目に合わせていたのかもしれない。


そんな俺の様子をチラッと見てから、石澤母は淡々と言葉を続けた。


「ちなみに相手の男は、別の人と結婚して、男の子にも女の子にも恵まれて幸せに暮らしてる」


俺はハッと顔を上げて石澤母の顔を見た。


彼女はどことなく申し訳ないような顔で、テレビに視線を移した。


テレビ台の隅には小さな写真立てが飾られていて、石澤の家族四人が家の前でにっこり笑っていた。


石澤の両親と、兄さんと、石澤と。


「……結局不本意な形で妊娠すると、身体も心も傷つくのは女の方なのよ。だから親友として彼女を支えてやらなきゃいけなかったのに、自分の想いを押し通してしまった私も大概だけどね」


「…………」


その言葉の意味は、訊かずとも彼女の表情が全てを物語っていた。


「もし因果応報が実際にあって、彼女が得るはずだった幸せを私が奪ったことで、その報いがもし桃子に来たら……なんて考えると、たまにどうしようもなく怖くなるのよね」


そう言って、石澤母はそっと目を伏せた。


「桃子には、平凡でいいから幸せになってもらいたいの。土橋くんにとってはうるせーババアの説教って思うかもしれないけど、これからも桃子と付き合っていくつもりなら、きちんとすべき所はきちんとして欲しい」


「……わかりました」


俺はそれだけ言うのがやっとだった。


ふざけた母親だと思ってたけど、ビシッと言いにくいことを娘のためにはっきり言える石澤母がとてもかっこよく見えた。



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