縄灯(前編)-5
「いいのか…オレはどんなことでもやらせてもらうぜ…」そう言いながら、男は私に顔を寄せ
ると、ざらりとしたむくんだ手で私のあごをしゃくりあげた。
私はしゃくりあげられた顔を小さく縦に振った。相手は凶暴で醜ければ醜いほどよかった…。
私はそういう男が欲しかったのだ。
男は私の肩を抱くと、まるで毛を毟られ傷ついた鳥を引きずるように私を裏路地の古びたホテル
に連れ込んだ。
「早くその服を脱げよ…」男は煙草に火をつけると、ゆっくりとベッドに腰をおろす。
男の前で、私は衣服のボタンを外し床に脱ぎ捨てる。恥ずかしい部分を手先で覆うことなく、
私は見知らぬ男の前で、自分の裸身の隅々まで無防備に晒した。そうすることをずっと望んで
いたかのように私の肉体はむず痒い欲情へと軋み始めていた。
「あんた、いくつなんだ…」
「あなたのご想像におまかせするわ…」
「年増の裸ってところだな…男が欲しいって体つきをしているじゃねえか…」
男は、薄笑いを浮かべながら、ゆっくりとシャツとズボンを脱ぎ始める。肥えた浅黒い肌から
生臭い体臭が漂ってくる。赤黒い剛毛が男の胸肌からそそり立ち、派手な色柄のトランクスの
源はすでに男の巨根を思わせるような膨らみを見せている。
「窓ガラスに手をついて、オレに背中を向けて立つんだ…そうだ…わりと素直じゃねえか…
脚を開いてその尻をオレの方に突き上げろ…」
私は言われるままに男に背中を向けると、足元から広がる大きな窓に腕を伸ばし冷ややかな
ガラスに掌をついた。男は私の背後から近づき、ゆっくりと私の背中の窪みを指でなぞり、
腰のまわりに沿って手を這わせ、ねっとりと湿った手で臀部の肉肌を鷲づかみにする。
「歳のわりには、ムチムチしたいいからだをしているじゃねえか…」
そして指で腿の内側をなぞりあげながら、股間に手をすべり込ませる。男の指が私のそそけ立
つ恥毛を絡めながら割れ目の肉びらにぬるりと触れる。ざらりとした指先で陰部の湿った肉縁
をゆっくりとなぞられると、すでに淫液でぬるぬると潤った秘唇が彼の指と溶けあうように
馴染んでくる。
「感じやすいからだをしているぜ…男に少しばかりいじられただけで、もうこんなに濡れてい
るじゃねえか…男好きのまんこも締まりぐあいは良さそうだな…」
私はすでに押さえきれない欲情に駆られたように彼の指を花唇で包み込み、襞の中に徐々に
強く含ませようとしていた。彼の指が柔らかく敏感な女の部分を啄むように擦っていく。
「気持ちよくなってきたみたいだな…悪く思わないで欲しいが、オレはセックスの前に女を
痛めつけるのが趣味でね…」
そう言いながら、男は脱ぎ捨てたズボンから抜き取った細いベルトを私の目の前に垂らす。
「ぶたれるのは嫌いじゃないみたいだな…」
男は手にしたベルトをキュッキュッと鳴らしながら、ゆっくりと私の背後に立った。淡い光を
反射したガラス窓に映った男のゆがんだ顔が、窓に拡がる夜の街のネオンの光と妖しく混じり
合う。
そのときだった…。